成年後見監督人の報酬について、現役の保佐監督人である私が、できるだけわかりやすく解説します。

成年後見監督人はどんな人?

成年後見監督人とは?

成年後見人とは、(主に経済的な)判断能力がない人の代わりに、その人の財産を管理したり、身上を保護したりする人です。そして、成年後見監督人とは、家庭裁判所の代わりに成年後見人を監督する人です。

監督人は、全部で次の4種類です。

  1. 成年後見監督人
  2. 保佐監督人
  3. 補助監督人
  4. 任意後見監督人

任意後見監督人以外の監督人は、ご本人に財産が多く、かつ、成年後見人が親族や市民後見人、行政書士などの場合などに、家庭裁判所によって選任されることがあります。他方、任意後見監督人は、法律で必ず選任しなければならないと決まっています。

成年後見監督人などは、弁護士や司法書士などの法律の専門家が選任されます。ただ、市民後見人の場合は、市民後見人を養成した社会福祉協議会などが監督人に選任されることもあります。

成年後見監督人の職務内容

成年後見人の職務は、民法という法律で、次のように定めています。

(後見監督人の職務)
第八百五十一条 後見監督人の職務は、次のとおりとする。
一 後見人の事務を監督すること。
二 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。
三 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。
四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。

民法851条

基本的な職務は、「後見人の事務を監督すること」です。監督といっても、具体的にどのようなことをするのでしょうか? 監督内容の具体例は、次のとおりです。

  • 成年後見人などから、ご本人の状況や財産の管理状況について、報告を受けて、適正に職務が行われているかをチェックする
  • 成年後見人などの報告をチェックした上で、家庭裁判所に報告する
  • 法律の知識の乏しい成年後見人などからの相談の対応や指導

成年後見監督人などの報酬

報酬の種類

成年後見監督人の報酬は、成年後見人などと同じく、次の2種類あります。

  1. 基本報酬
  2. 付加報酬

基本報酬は、上で紹介した成年後見監督人などの監督業務に対する対価のことです。

他方、付加報酬とは、成年後見監督人などが成年後見人などの代わりに、ご本人のために特別なことをしたり、同意したりした場合の対価です。

基本報酬額の目安

報酬の金額は、ご本人や成年後見人、成年後見監督人などが決めることはできず、家庭裁判所が決めます。家庭裁判所は、報酬額についての目安を公表しています(成年後見人等の報酬のめやす)。

成年後見監督人などの基本報酬は、現金、預貯金、有価証券(株式、投資信託、国債など)の流動資産(簡単に現金化できる資産)の合計金額によって、次の表のように2段階に分かれます。

流動資産月額年額
5000万以下1〜2万円12〜24万円
5000万超2.5〜3万円20〜36万円
成年後見監督人などの報酬の目安

付加報酬額の目安

家庭裁判所は、付加報酬については、基本報酬のような明確な目安は公表していません。ただ、成年後見監督人が成年後見人などに代わって特別なことをした場合は、成年後見人などと同じく、「ご本人が手に入れた経済的利益の数%から15%の範囲内」と考えられます。他方、単に同意しただけの場合は、さほど労力がかかっていないので、特別なことをした場合よりも大幅に減額されると思われます。

成年後見監督人の報酬を市町村が肩代わり

以上が、成年後見監督人の報酬についての目安です。最大でも年間36万円ぐらいであることがわかります。この基本報酬は、任意後見監督人の場合は、基本的にはご本人が亡くなるまで発生します。他方、成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人は、家庭裁判所が監督人をつける必要がなくなったと判断した場合、監督人が辞任することもあるので、必ずしもご本人が亡くなるまで発生するとは限りません。

成年後見監督人の報酬が高くて、利用したくてもできない。成年後見監督人に報酬を払うのがもったいない。このように思っていませんか? そのような方には、成年後見監督人の報酬を市町村が肩代わりしてくれる制度、つまり、成年後見監督人の報酬の助成制度があるのをご存知ですか? この報酬助成制度については、「成年後見制度を無料で利用できる制度」で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

成年後見制度の報酬をより詳しく知りたい方は、「成年後見人などの報酬 【現役の成年後見人・監督人がすべて教えます】」をご覧ください。