障害があると、保険に入れないとよく言われます。これは本当でしょうか? 結論を最初に述べると、入れない保険もあれば、入れる保険や工夫次第で入れる保険もあります。

障害者が入れる保険や入れない保険、障害者やその家族が入った方がいい保険、障害者の親亡き後と保険について、保険の仕組みから丁寧に弁護士が解説します。

保険の基本的な仕組み

そもそも保険に入るというのは、どういうことでしょうか? 一般的には、保険に入るとは、保険会社と保険の契約を結ぶという意味でしょう。つまり、障害者は保険に入れないというのは、保険契約者になれないという意味になります。しかし、障害者が保険契約者になれるかどうかは、障害の種類や程度によって違いますので、一概に障害があると保険に入れないとはいえません。

また、保険のメリットは、保険契約者ではなくても、受けることができます。例えば、保険金の受取人や被保険者になれれば、障害者やその家族が保険のメリットを受けることができます。

この説明だけではよくわからない人もいると思うので、保険の基本的な仕組みから解説します。

保険の登場人物

保険には、次の4人の人物が登場します(保険法2条)。

  1. 保険者
  2. 保険契約者
  3. 被保険者
  4. 保険金受取人

保険者とは、保険契約に基づいて、保険金を支払う保険会社のことです。

保険契約者とは、保険契約に基づいて、保険料を支払う人のことです。

被保険者とは、簡単にいうと保険の対象となる人のことです。保険の対象者が誰かによって保険料が変わるので、保険においては重要となります。

保険金受取人とは、保険会社から支払われる保険金を受け取る権利がある人のことです。

保険契約の内容によって、保険契約者と被保険者と保険金受取人は、同じ人の場合もあれば、それぞれ別の人ということもあります。

障害があると保険に入れないとは?

保険契約者は、法的な判断能力に問題がない人しか原則として加入することはできません。ですので、判断能力に問題のある知的障害者や精神障害者は、保険契約者には、原則としてなれません。ただし、そのような人でも、成年後見人が選任されていれば、保険契約者になれます。実際に、私は成年後見人として損害保険に加入しています。

私の子どもは、現在、重度の知的障害者なので、保険契約者には原則としてなれません。ただし、私が加入している損害保険の被保険者にはなれています。私の加入している損害保険の被保険者は、私と配偶者、子どもです。この損害保険に加入する際に、被保険者の障害の有無は問われませんでした。そのため、私の子どもも被保険者として、損害保険の対象者です。

したがって、私の子どもが他人から損害を受けたり、逆に、誤って他人に損害を与えた場合には、損害保険会社が損害を穴埋めするために、保険金を支払ってくれます。

また、私は、万が一に備えて、掛け捨て型の生命保険に加入しています。その保険金受取人は配偶者に指定しています。ただし、保険金受取人を障害のある子どもに指定することもできます。そうした場合には、私の身に何かあった場合、子どもが保険金を受け取ることができます。

障害者が保険に入れないという場合に、保険契約者になれないという意味なのか、それとも、被保険者になれないという意味なのかを明確にする必要があります。どちらなのかで、対処方法が違います。

つまり、保険契約者になれないという意味であれば、障害者以外が保険契約者になれないかを検討します。他方、被保険者になれないということであれば、被保険者になれる保険を探すということになります。

保険の種類

これまでは、漠然と保険について解説してきました。これからは、保険の種類について簡単に説明します。保険の種類によって性質や特徴が変わります。

保険というと、種類が豊富でよくわからないという人が少なくないと思います。私も「保険法」という法律を勉強するまでは、保険って難しいと思っていました。しかし、保健法では、保険を大きく3つに分けています。世の中にある保険のほとんどは、この3タイプのどれかに当てはまります。ですので、この3つのタイプについて、基礎的なことを理解しておくと、保険って意外にシンプルだということがわかり、とっつきやすくなると思います。

保険は、保険法では、次の3つに分けられます。

  1. 生命保険
  2. 損害保険
  3. 傷害疾病定額保険

生命保険とは

生命保険とは、被保険者(保険の対象者)の死亡または生存に関して、一定額の保険金が支払われる保険のことです。

ここで注意したいのは、「生存に関して」ということです。生命保険とは、死亡した場合に死亡保険金が支払われる保険だけではありません。保険契約を結んで、一定期間後に生きている場合に支払われる保険も生命保険に含まれます。

生存に関する生命保険の代表例として、学資保険や個人年金保険があります。学資保険は、子どもが18歳になったときに、一定額の保険金が支払われます。個人年金保険は、被保険者(保険の対象者)が65歳などになったときに、一定額の保険金が支払われます。このように、ある時期に被保険者が生きている場合に保険金が支払われるので、生命保険にあたります。

損害保険とは

偶然の事故によって生じることのある損害を穴埋めする保険のことです。損害保険の代表例が自動車保険や火災保険です。

損害保険で大事なことは、交通事故や火災などによって被保険者(保険の対象者)が受けた損害だけではなく、他人に与えた損害も損害保険の対象だということです。

それから、損害保険は、偶然の事故による損害と限定されています。なので、保険契約者や被保険者がわざと・故意(故意と同等のミスも含みます)によって生じた損害については、保険金は支払われません。例えば、当たり屋行為や偽装事故などです。

損害保険は、他の2つの保険とは違って、保険金は一定額ではなく、実際の損害額になります。もっとも、多くの損害保険は、補償の上限額を設定していますので、支払われる保険金は、その範囲内になります。

傷害疾病定額保険とは

傷害疾病定額保険というのは、聞きなれないと思います。しかし、そんなに難しいものではありません。被保険者がケガしたり病気になったりした場合に、一定額の保険金が支払われる保険です。例えば、医療保険やガン保険、所得保障保険などです。

傷害疾病定額保険は、生命保険の一種ともいえます。ケガや病気に特化した生命保険ともいえます。

保険料と保険金の関係

保険の仕組みとして大事な知識として、保険契約者が支払う保険料と、保険会社が支払う保険金の関係があります。保険料と保険金の関係は、次のような関係にあります。

保険料 = 保険金 × 保険金が支払われる確率

例えば、死亡保険の場合、20代と高齢者の死亡確率(保険金が支払われる確率)を比較すると、高齢者の方が高いため、支払われる死亡保険金の金額が同じであれば、20代の方が保険料は少なくなります。また、毎日車を運転している人と、週末しか運転をしていない人では、交通事故に遭う確率は、毎日運転している人の方が高いので、保険料が高くなります。

保険料と保険金の関係で、特に重要なのは、保険金は保険料が原資になっていることです。

障害者やその家族にとって必要な保険

保険は3つタイプがあることを解説しました。これらの3つのタイプの保険について、障害者やその家族にとって必要な保険はなにかについて、私の意見を述べます。

定期保険と貯蓄型保険

生命保険は、保険料が掛け捨てタイプと、そうではないものがあります。

掛け捨てタイプの代表例が定期保険です。定期保険は、被保険者(保険の対象者)か一定期間内に死亡または重度の障害を負った場合に、支払った保険料を遥かに超える金額の保険金が支払われる生命保険です。配偶者の収入が少なく、子どもが未成年の家庭で、一家の大黒柱が加入するのが典型例です。

定期保険は、障害者自身が一家の大黒柱でない限り、特に入る必要はありません。他方、障害者の親は、万が一に備えて加入するのもいいと思います。私も加入しています。ただし、被保険者の年齢が上がると死亡率も上がり、それに伴い保険料も増えるため、加入する期間は限られることになるでしょう。

他方、貯蓄型の保険は、保険に加入する主な目的が貯蓄である生命保険です。貯蓄型の保険に加入するか否は、保険契約者の自由で、加入してもしなくても、どちらでも大丈夫です。生命保険より魅力的な貯蓄方法があれば、わざわざ加入しなくてもいいです。他方、貯蓄型の生命保険は、低金利の預貯金よりも利回りがいいですし、元本保証があるものが多いので、これらを重視して加入するのもいいでしょう。

損害保険

損害保険は、障害者もその家族も加入することをおすすめします。損害保険は万が一の備えとして大事です。

偶然の事故は、どんなに気をつけても完全に避けることは難しいです。特に、他人にケガをさせてしまった場合、ケガの程度や、後遺障害の有無によっては、数千万円以上の損害を賠償する責任が生じることも珍しくありません。損害保険の保険料は、月1000円程度で、莫大な損害賠償金を支払うかもしれない事故に備えることができます。

障害者自身が保険契約者になれない場合は、その家族が保険契約者となり、障害者が被保険者になれる損害保険に加入してください。

損害保険に加入する際に、次の2つの特約を付けるかどうかを十分に検討してください。

個人賠償責任特約

損害保険に加入する際は、個人賠償責任特約は、通常セットになっています。個人賠償責任特約とは、偶然の事故で、他人にケガなどを負わせて損害が生じた場合に、その賠償金を補償する特約です。補償額には商品によって異なりますが、個人賠償責任特約の補償額上限額が3億円以上のものをお勧めします。

ネットの損害保険会社の商品では上限額が1億円というものが多いですが、弁護士としては1億円ではやや心もとないです。被害者が複数の場合や、被害者が若い場合には、損害賠償金が1億円を超えることもあり得るからです。

弁護士費用特約

それから、弁護士費用特約を付けることもお勧めします。弁護士費用特約は、自動車保険の特約として広まりました。現在は、交通事故以外の事故についても弁護士費用特約がある損害保険も増えてきました。

交通事故以外でも使える弁護士費用特約付きの損害保険は、障害者やその家族が被害に遭った場合に心強いです。月数百円を保険料にプラスするだけで、300万円まで、弁護士費用を保険会社が肩代わりしてくれます。特に、損害額が100万円未満などの場合には、弁護士を雇うと費用倒れになる可能性があるので、そのような場合に弁護士費用特約は威力を発揮します。

傷害疾病定額保険

傷害疾病定額保険は、貯蓄型の生命保険と同様に、加入するか否かは考え方次第です。

保険料の掛け捨ての傷害疾病定額保険は、保険加入中に、ケガや病気にならない場合は、保険料は無駄になります。

医療費は、原則として、国民健康保険で3割負担です。医療費が高額になっても、高額療養費制度があり、医療費の負担には上限があります。したがって、損害保険のように莫大なお金を払う可能性はそんなにありません。そして、ケガや病気になるかわかりませんし、もしケガや病気になったら、障害者やその家族の収入や貯蓄でなんとかなるかもしません。

私は、このように考えているので、医療保険、ガン保険、所得保障保険などの傷害疾病定額保険には加入していません。

他方、実際にケガや病気になった人は、医療保険やがん保険に加入していてよかったとよく聞きます。

ですので、結局、傷害疾病定額保険に加入するかどうかは、保険契約者の考え方次第ということになります。

障害者の親亡き後と保険

最後に、障害者の親亡き後と保険について考えてみます。

損害保険については、障害の有無に関わらず、加入した方がよい保険です。しかし、障害者自身が判断能力に問題があり保険契約者になれない場合、親が存命のうちは親が保険契約者となり、障害者を被保険者にすることは可能です。しかし、親が亡くなった後はどうすればいいでしょうか?

対処方法としては、成年後見人などを選任して、成年後見人によって保険契約を結ぶというのがあります。また、きょうだい児がいる場合には、きょうだい児に保険契約者になってもらうこともあります。もっとも、被保険者の範囲として、保険契約者の同居する家族という限定がある保険商品もあるので、きょうだい児が保険契約者になる場合には、選択の幅は狭まるでしょう。

また、保険金の受取人が判断能力に問題のある障害者である場合、保険金の受取手続きをその障害者自身でするのは困難です。このような場合にも、成年後見人などを選任して、代わりに保険金の請求をしてもらうしかありません。

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