療育手帳とは?

療育手帳は、知的障害があることの証明を容易にし、各種福祉サービスを受けやすくするためのものです(療育手帳制度について療育手帳制度要綱)。

療育手帳は、障害者手帳の一つです。障害者手帳には、他に身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳があります。この二つの手帳は、法律で定められています。

しかし、療育手帳は、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳とは違って、法律で決められているわけではありません。厚生労働省の「療育手帳制度要綱」を参考に、都道府県と政令指定都市が作っている制度です。そのため、地域によって細かな違いがあり、利用者側は混乱することもあります。

例えば、手帳の名称も地域によって異なります。東京都は「愛の手帳」といい、埼玉県は、以前は「みどりの手帳」と呼んでいました。

療育手帳を手に入れることができる人

知的障害とは?

療育手帳がもらえるのは、児童相談所(18歳未満)か、知的障害者更生相談所(18歳以上)で、知的障害と判定された人です。

では、そもそも知的障害とはなんでしょうか? 法律には「知的障害」という言葉が書かれています。しかし、それがどういう意味かは定められていません。

ただし、地方自治体によっては、知的障害を定義しているところもあります。例えば、愛媛県療育手帳判定実施要領によると、定義は次のとおりです。

おおむね18歳までの発達期に発現した一般的知的機能の障がいと、日常的、社会的適応の困難性の両方を有しており、医療、福祉、教育、職業等の面で特別な支援を必要とする状態にあるもの。

愛媛県療育手帳判定実施要領

精神遅滞

知的障害は、精神医学では精神(発達)遅滞ということが多いです。もっとも、最近は知的能力障害ともいいます。

精神(発達)遅滞の程度として、ICD-10によると、次のような4つに分けられます。

程度IQ成人した時の精神年齢特徴
軽度50〜699歳〜11歳学校でいくつかの学習困難をきたしやすい。 多くの成人は働くことができ、社会的関係がよく保たれ、 社会へ貢献する。
中等度49〜356歳〜8歳小児期には著明な発達の遅れをきたしやすいが、多くの者は、自分の身の回りのことをある程度できるようになり、他人とのコミュニケーションができ、型にはまった技術を行える。 成人は、社会で生活したり働いたりするために、さまざまな程度の援助を必要とする。
重度34〜203〜5歳援助の持続的な必要をきたしやすい。
最重度20未満3歳未満自分の身の回りのこと、排泄抑制力、コミュニケーション及び運動において、重度の制限をきたす。
知的障害(精神遅滞)の程度

IQ(知能指数)は、田中ビネー式知能検査やウェクスラー成人知能検査などで測定します。

療育手帳の判定において、これらの検査ができないときは、家族からの聴取や行動観察などで、IQやDQ(発達指数)を推定し、その数値を用います(愛媛県療育手帳判定実施要領)。

療育手帳の区分

療育手帳は知的障害の程度で、重度とそれ以外に分かれます(療育手帳制度要綱)。重度だと療育手帳取得によるサービスの提供が手厚くなります。

地域によっては、重度、それ以外をさらに細かく分けているところも多いです。例えば、埼玉県は、最重度である○A、A、B、Cの4段階になっています(療育手帳)。

療育手帳の程度の区分が、精神医学における精神遅滞の段階とイコールかというと、必ずしもそうではありません。これが厄介なところです。例えば、愛媛県は軽度知的障害について、IQ(知能指数)51から75としています。そのため、他地域に転居したときに、知的障害の程度が変わらなくても、療育手帳の区分が変わることもあります。

身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳のように、法律に基づく制度にして、全国的に統一されることを望みます。

療育手帳を取得するメリット

療育手帳 を取得するメリットとして、次のようにさまざまなものがあります(知的障害児でも受けられるものに限定しています)。なお、地域によっては受けられないものもあるかもしれません。

お金をもらえる

  1. 在宅重度障害者手当
  2. 障害児福祉手当
  3. 特別児童扶養手当(親や保護者がもらえます)

1.の在宅重度障害者手当は、地方自治体独自の手当で、受給の要件として、障害者手帳の等級が基準となっているところが多いです。他方、2.と3.は法律に基づく手当ですので、障害者手帳を取得していなくても、受給可能です。

未就学や未成年のお子さんの療育手帳を申請するときには、一緒に特別児童扶養手当の申請もすることをお勧めします。特別児童扶養手当については、「特別児童扶養手当とは?」をご覧ください。

医療

  1. 重度心身障害者医療費の助成
  2. 専門的な歯科診療

税金

  1. 所得税・住民税控除(障害者自身だけではなく保護者も)
  2. 相続税の税額控除
  3. 自動車税の減免

生活その他

  1. 県営住宅の入居
  2. 福祉タクシーの利用券
  3. タクシー料金の1割引
  4. ガソリン代の助成
  5. 駐車禁止適用除外
  6. NHKの放送受信料の減免
  7. 国内航空運賃の割引
  8. 電車・バスの運賃の割引
  9. 有料道路の割引

ただし、

  • 公的な制度に基づくものは療育手帳がなくても、知的障害を証明できれば受けられるものが多いです。つまり、療育手帳は、知的障害の証明が容易になるというメリットがメインになります。
  • 多くのメリットは、重度(A)でないと受けられません。

療育手帳を取得するデメリット

療育手帳を取得するデメリットは、特にありません。

あるとすれば、原則として2年ごとの再判定が必要なので、それが手間ということはあります。もっとも、成人後は再判定の期間が10年と延長されたり、一定年齢を超えると再判定なしになったりすることもあります(愛媛県療育手帳判定実施要領)。

本人や家族の障害の受容の点で、療育手帳の取得がハードルになることもあります。

療育手帳の取得の一般的な流れ

  1. 市町村の障害福祉関連の窓口で申請
  2. 児童相談所等で心理専門職や医師による本人・保護者との面談
  3. 判定
  4. 療育手帳の交付

2の面談は、予約待ちで数か月待たされることもあるそうです。
4の交付は、2の面談から約1か月から2か月で、都道府県や市町村から書類が届くので、指示されたものを持参して役所に行ってください。

動画