療育手帳とは?
療育手帳は、知的障害があることの証明を容易にし、各種福祉サービスを受けやすくするためのものです(療育手帳制度について・療育手帳制度要綱)。
身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳とは違って、法律を根拠としていません。都道府県と政令指定都市の独自の制度です。そのため、地域によって細かな違いがあり、利用者側は混乱することもあります。
療育手帳を手に入れることができる人
療育手帳がもらえるのは、児童相談所(18歳未満)か、知的障害者更生相談所(18歳以上)で、知的障害と認定された人です。
では、そもそも知的障害とはなんでしょうか? 法律には「知的障害」という言葉が書かれています。しかし、それがどういう意味かは定められていません。
精神遅滞
知的障害は、精神医学では精神遅滞ということが多いです。もっとも、最近は知的能力障害ともいいます。
精神遅滞とは、次の3つすべてに当てはまる場合をいいます。
- IQが70未満
- 社会的能力が低く、不適応が生じている
- 18歳未満に現れること

このように、精神遅滞はIQのみで診断されるわけではありません。
知的障害(精神遅滞)の程度
程度 | IQ | 成人した時の精神年齢 |
---|---|---|
軽度 | 69〜50 | 10歳 |
中等度 | 49〜35 | 7歳 |
重度 | 34〜20 | 3〜6歳 |
最重度 | 20未満 |
IQは、田中ビネー式知能検査やWAIS-IIIなどで測定します。もっとも、誤差があるので誤差±5も考慮する必要があります。
療育手帳の判定において、これらの検査ができないときは、家族からの聴取や行動観察などで、IQやDQ(発達指数)を推定し、その数値を用います(愛媛県療育手帳判定実施要領)。
療育手帳の区分
療育手帳は知的障害の程度で、重度(A)とそれ以外(B)に分かれます。重度だと療育手帳取得によるサービスの提供が手厚くなります。
地域によっては、重度、それ以外をさらに細かく分けているところも多いです。例えば、埼玉県は、最重度である○A、A、B、Cの4段階になっています(療育手帳)。
療育手帳の程度の区分が、精神医学における精神遅滞の段階とイコールかというと、必ずしもそうではありません。これが厄介なところです。他地域に転居したときに、知的障害の程度が変わらなくても、療育手帳の区分が変わることもあります。

他の手帳のように、法律に基づく制度にして、全国的に統一した方が望ましいです。
療育手帳を取得するメリット
療育手帳 を取得するメリットとして、次のようにさまざまなものがあります(知的障害児でも受けられるものに限定しています)。なお、地域によっては受けられないものもあるかもしれません。
お金をもらえる
- 在宅重度心身障害者手当
- 障害児福祉手当
- 特別児童扶養手当(親や保護者がもらえます)
医療
- 重度心身障害者医療費の助成
- 専門的な歯科診療
税金
- 所得税の控除
- 住民税の控除
- 相続税の税額控除
- 自動車税の減免
生活その他
- 県営住宅の入居
- 福祉タクシーの利用券
- タクシー料金の1割引
- ガソリン代の助成
- 駐車禁止適用除外
- NHKの放送受信料の減免
- 国内航空運賃の割引
- 電車・バスの運賃の割引
- 有料道路の割引
ただし、
- 公的な制度に基づくものは療育手帳がなくても、知的障害を証明できれば受けられるものが多いです。つまり、療育手帳は、知的障害の証明が容易になるというメリットがメインになります。
- 多くのメリットは、重度(A)でないと受けられません。
療育手帳を取得するデメリット
療育手帳を取得するデメリットは、特にありません。18歳未満だと一定期間(概ね2年)経過後、障害の再判定が必要になるのが、やや面倒な程度です。

なお、療育手帳を取得すると保険に入れないというデメリットがあるといわれています。この点については、現在調査中です。
本人や家族の障害の受容の点で、療育手帳の取得がハードルになることもあります。
療育手帳の取得の一般的な流れ
- 市町村の障害福祉関連の窓口で申請
- 児童相談所等で児童心理司と医師による本人・保護者との面談
- 判定
- 療育手帳の交付

2の面談は、予約待ちで数か月待たされることもあるそうです。
4の交付は、2の面談から約1か月から2か月で、都道府県や市町村から書類が届くので、指示されたものを持参して役所に行ってください。