障害者雇用と福祉的就労

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相談者
私たちには障害のある子どもがいます。まだ学校に通っているのですが、大人になったら働くことができるか心配です。
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弁護士
障害があっても働くことができれば、親御さんとしては安心ですよね。
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相談者
はい、そうなんです。障害のある子どもが大人になったらどのようにして働いているのでしょうか?
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弁護士
それでは、障害のある方の就労について、現状を解説します。障害者の就労として、障害者雇用と福祉的就労というものがあります。これらを中心に解説します。

障害者雇用

まず、障害者雇用の解説から始めます。

障害者雇用とは?

そもそも障害者雇用とはなんでしょうか?

障害者雇用促進法という法律があるのをご存知ですか? その名前からもわかるように、障害者の雇用を促進するための法律です。この法律には、国・地方公共団体、一般の事業者に対して、一定割合の障害者を雇用することを義務付けています(障害者雇用促進法38条43条)。

この一定割合のことを法定雇用率といいます。2021年4月現在の法定雇用率は、国・地方公共団体が2.6%で、一般の事業者は2.3%となっています(リンク)。

一般雇用とは別に、この障害者の限定の雇用を「障害者雇用」と呼んでいます。

対象となる障害者

障害者雇用の対象となる障害者は、どのような障害者でしょうか?

これは、原則として、以下の障害者手帳を持っている人となります(障害者雇用促進法規則4条の15)。

  1. 身体障害者手帳
  2. 療育手帳
  3. 精神障害者保健福祉手帳

雇用される際に、これらの障害者手帳の提出を求められます。

障害者雇用と一般雇用の違い

障害者雇用が一般雇用とどのような点で違いがあるでしょうか? メリットとデメリットがあります。

障害者雇用のメリット

メリットとしては、障害の特性に対する合理的な配慮が受けられることです。障害者雇用促進法は、募集・採用時点から障害者の特性に配慮した必要な措置を講じることを義務付けています(障害者雇用促進法36条の236条の3)。

合理的な配慮の具体例として、知的障害者であれば、図などを活用した業務マニュアルの作成(「障害者雇用促進法改正法パンフレット」)や、サポート人員の配置などがあります。

障害者雇用のデメリット

障害者雇用のデメリットとしては、一般雇用に比べて賃金が低いということがあります。2018年(平成30年)の障害者雇用と一般雇用のそれぞれの平均賃金は、次のとおりになります(「平成30年賃金構造基本統計調査」・「平成30年度障害者雇用実態調査」)。

グループ平均賃金
身体障害者¥215,000
知的障害者¥117,000
精神障害者¥125,000
男性労働者¥337,600
女性労働者¥247,500
2018年障害者雇用と一般雇用の平均賃金一覧

障害者の賃金は、女性労働者よりも低いということがわかります。

なお、都道府県の労働局長の許可があれば、障害者の賃金は、一般の最低賃金を下回ることもあります(最低賃金法7条)。

福祉的就労

障害者雇用は、賃金は少ないものの、一般企業や公務員として働ける障害者が利用できます。しかし、一般企業や公務員として働くことが難しい障害のある人は、働くことはできないのでしょうか?

いえ、そのようなことはありません。一般雇用・障害者雇用の他に、いわゆる「福祉的就労」というものがあります。

福祉的就労とは、一般的に、障害者総合支援法における3つの障害福祉サービスを受けながら、働く、または一般就労を目指すことをいいます。

3つの障害福祉サービスとは、次のとおりです。

  1. 就労移行支援
  2. 就労継続支援A型
  3. 就労継続支援B型

この3つの障害福祉サービスについて、その内容を説明します。

就労移行支援

就労移行支援とは、簡単にいうと、就労を希望する障害者に対して、就労ができるようにサポートする障害福祉サービスです。

就労移行支援を受けられる障害者は、原則として65歳未満に限られます。一般就労の定年が65歳が多いことからです(高齢者雇用安定法9条)。

この障害福祉サービスは、原則として2年間です。延長できても最大3年間です。

就労移行支援の具体的な内容は、次のようなサポートです。

  1. 生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供
  2. 就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練
  3. 求職活動に関する支援
  4. 障害の適性に応じた職場の開拓
  5. 就職後における職場への定着のために必要な相談

就労継続支援A型・B型

就労継続支援は、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に対するサービスです。つまり、一般就労(障害者雇用も含む)は難しいけれど、働きたいと思っている障害者の受け皿といえます。

サービスの内容は、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練を与えるサービスです。つまり、「就労等の機会の提供」と「訓練」がサービスの2つの柱となります。

就労継続支援は、A型とB型の2つに分けられます。A型は雇用契約を結んで就労の機会を提供するもので、B型は雇用契約は結ばずに就労の機会が提供されます。つまり、A型とB型の違いは、雇用契約の有無にあります。この違いは、労働者として守られる(解雇されにくい、有給休暇があるなど)か否かに繋がります。

就労継続支援は、就労移行支援とは異なり、期間に制限はありません。

就労継続支援を行うのは、職業指導員・生活支援員と呼ばれるスタッフです。ただ、職業指導員・生活支援員ともに無資格でもなれることには注意が必要です。

福祉的就労の賃金の現状

最後に、福祉的就労の賃金について見ていきます。なお、就労継続支援B型は雇用契約を結びませんので、賃金ではなく、工賃が支給されます。

一般就労と福祉的就労の賃金・工賃は、次のとおりです(「平成30年度工賃(賃金)の実績について」。

グループ平均賃金
就労継続支援A型¥76,877
就労継続支援B型¥16,118
身体障害者¥215,000
知的障害者¥117,000
精神障害者¥125,000
男性労働者¥337,600
女性労働者¥247,500
2018年一般就労と福祉的就労平均賃金(工賃を含む)一覧

福祉的就労は、一般就労と比べると、一桁違うことがわかります。

おわりに

以上が、障害者雇用と福祉的就労の意味や違い、現状についての解説でした。

福祉的就労の賃金・工賃、障害者雇用のうち知的障害者、精神障害者の賃金があまりにも少ないという現状については、解決しなければならない課題です。個人的には、障害年金と就労による収入を合わせたら、生活保護レベル以上の収入が得られるように、制度を変えていく必要があると考えます。