



社会保障の全体像
まず、日本における社会保障制度の全体像を示します。下の図がその全体像に当たります。

日本の社会保障制度は、大きく分けて社会保険と社会扶助に分けられます。社会保険は、次のように5つに分けられます。
- 年金保険
- 医療保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 介護保険
他方、社会扶助は、次のように3つに分けられます。
- 公的扶助
- 社会手当
- 社会サービス

以前は、社会保障を社会保険、公的扶助、社会福祉、公衆衛生の4つで構成されていると言う考え方が主流でした。しかし、公衆衛生を社会保障として捉えると理解しにくいと思います。そこで、ここでは公衆衛生については触れません。
社会保険と社会扶助
社会保険とは?

社会保険という言葉は、会社勤めをしてお給料もらっている人にとっては、なじみのある言葉だと思います。どういうことかというと、毎月もらっている給料明細に「社会保険料」や「社会保険合計」という欄がありませんか? 普段は何気なく見ているだけで意識はしていないと思いますが、多くの方の給料明細には社会保険という言葉があると思います。
しかし、馴染み深い言葉だとしても、社会保険の意味までしっかり理解している人は多くはいないかと思います。
社会保険とは、病気やケガ、老いなど多くの人の身に起きるであろうリスクに備えて、みんなでお金を出し合って集め、病気やケガをした人、年をとって働けなくなり収入が減った人に、その集めたお金から治療費を支払ったり、減った収入を補ったりする仕組みのことをいいいます。
つまり、社会保険を使って、お互いに支え合うという仕組みです。このような考えを共に助けること、つまり、「共助」ともいいます。
障害のある子どもにとっての社会保険
障害のあるお子さんにとって、社会保険がどう関わるかを見ていきます。
障害年金
障害のある子どもが成人すると、障害年金をもらえることになります。障害のある人にとって就職することは必ずしも簡単なことではありません。働いてお金を稼げるようになったとしても、健常者と差が出ることも多いです。障害のある人にとって障害年金は唯一の収入となる場合もあります。
(国民)健康保険
障害のある人は、定期的に通院をする人も多いのではないでしょうか。病院で診察や治療を受ける上で、(国民)健康保険に加入していると、自己負担額は最大で3割ですみます。
介護保険
障害があるお子さんも歳をとれば、誰かに介護をしてもらう必要が出てくることもあるでしょう。そのようなときには、介護保険を利用して、介護サービスを受けることができます。
社会扶助

社会扶助とはなんでしょうか? 社会保険とは違って、馴染みのない言葉だと思います。
社会扶助とは、お金がなくて困っている人や障害があって困っている人など支援を必要とする人々に対して、税金によって、お金やサービスを提供する仕組みをいいます。
自助努力や、共助(社会保険)では対応できない状況にある人々に対して、必要な生活保障を行うこと、すなわち、公助という言い方もします。
公的扶助
日本における公的扶助の制度は、生活保護です。生活保護は日本国憲法25条が定める健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障する制度です。
障害のある人の収入源は、障害年金と就労継続支援B型で受け取る工賃だけであることが多いです。障害年金と工賃だけでは経済的に自立することは困難な金額です。したがって、親が生きている間はなんとか親が支えることができたとしても、親亡き後に障害のある子どもが生活保護を受給することもあり得ます。
そのため、今のうちから生活保護がどのような制度なのかは、ある程度理解しておくことが望ましいです。
社会手当
社会手当とは、経済的支援が必要な人々に対して、主に税金によりお金を支給する制度のことです。
具体的には、以下の手当が社会手当にあたります。
- 児童手当
- 児童扶養手当
- 特別児童扶養手当
- 障害児福祉手当
- 特別障害者手当
特別児童扶養手当(「特児」と略されることがあります)は、重度または中等度の障害のある子どもの親や保護者に毎月数万円が支給される制度です。
社会サービス
社会サービスは、次のような人々に対して、福祉サービスを提供することです。
- 児童
- 障害者
- ひとり親家庭
- 高齢者
障害のあるお子さんが受けている、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの療育も社会サービスの一つです。障害のあるお子さんが大人になったら、グループホームや就労継続支援などの障害者サービスを受けて、自立した暮らしができるように支援を受けます。
まとめ

以上の解説からもお分かりになるかと思いますが、障害のあるお子さんや、その親・保護者にとって、社会保障は切っても切れない関係にあります。障害のあるお子さんが、社会の中で生きていくためには、これらの社会保障制度を活用していくことが重要になってきます。そのためには、社会保障制度の全体像をざっくり把握した上で、障害のあるお子さんに必要な制度を見出していくことが大事になります。