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障害のあるお子さんの収入が少なくて心配






生活保護でいくらもらえるの?
生活保護で一番気になる点は、もらえる金額だと思います。この点について解説します。
障害のある甲野太郎さんのケース
生活保護のもらえる金額の解説に入る前に、イメージが沸きやすいように、まず具体的なケースを設定したいと思います。

この甲野太郎さんのケースで生活保護の制度について解説していきます。
生活保護の支給額
では、甲野太郎さんが生活保護を受けた場合、いくらもらえるでしょうか?
結論を先に示すと、6万4000円(100円以下切り捨て)になります。内訳は次のとおりです。
費目 | 金額 |
---|---|
生活扶助(生活費の補助) | +94,000円 |
住宅扶助(家賃の補助) | +45,000円 |
障害年金 | -60,000円 |
工賃 | -15,000円 |
最低生活費とは?
生活保護を受けられるかどうかは、世帯の収入が、国が定めた「最低生活費」より低いかどうかで決まります。
最低生活費の計算方法は複雑なので、ここでは紹介しません。国が定めた生活費、家賃、教育費、介護費用、医療費などの合計金額が最低生活費と捉えていただければ結構です。
甲野太郎さんのように、障害年金と工賃という収入がある場合は、最低生活費と収入の差額が生活保護費として受け取ることができます。無職で年金ももらっておらず収入がゼロの場合は、最低生活費全額が支給されます。
生活保護の8つの扶助
生活保護は、以下の8つの項目について支給されます(生活保護法11条1項)。
- 生活扶助
- 教育扶助
- 住宅扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
- 出産扶助
- 生業扶助
- 葬祭扶助
この8つの扶助のうち、生活扶助と住宅扶助が中心になります。
なお、医療扶助も大事な扶助ですが、医療扶助はお金をもらうのではなく、無料で医療を受けられるものなので、月々の生活保護がいくらもらえるかという点には影響しません。
生活扶助とは?
生活扶助とは、食費、水道光熱費、衣服費、携帯料金、交通費、日用品費などの日常生活に必要なものを購入するためのお金を支給することです。生活保護費の中でもっとも金額が大きくなります。
生活扶助の金額は、お住まいの地域、世帯の人数、年齢、障害の有無などで変わります。例えば、大都市だと物価が高くなるので、生活扶助の金額も増えます。また、障害があったり、18歳未満の子どもを育てている場合などは生活扶助の基準額に加算されて、金額が増えます。
障害者加算
障害のある方が生活保護を受給する場合、生活扶助の金額が増えることがあります。これを障害者加算といいます。
障害年金1級・2級を受給をしていれば、障害者加算が認められます(※障害年金を受給していなければもらえないという意味ではありません)。
等級 | 金額 |
---|---|
障害年金1級 | 最大約27,000円 |
障害年金2級 | 最大約18,000円 |
甲野太郎さんの場合、障害基礎年金2級を受給しているので、生活扶助の金額が約18000円増えることになります。
住宅扶助とは?
住宅扶助とは、土地建物を所有しておらず、賃貸で暮らしている人の家賃や地代の支払いに当てられるお金を支給することです。
住宅扶助は上限が決まっており、実際に支払っている家賃や地代の全額が支給されるわけではありません。単身者の場合、東京都内であれば約54,000円で、政令指定都市であるさいたま市で45,000円です。
住宅扶助の上限内で家を借りるとなると、駅から遠く、築年数も古く、狭い部屋しか難しいでしょう。もし家賃が住宅扶助の上限額を超える場合は、生活扶助のお金を回さなければならず、生活費が減ることになります。
生活保護ではギリギリの生活
以上が、生活保護でもらえるお金についての解説です。甲野太郎さんの場合、障害基礎年金などを含めても、月額約15万円で暮らさなければなりません。私個人の印象ですが、生活保護による生活は、ゆとりがあるとは到底いえず、ギリギリの生活といわざるをえないです。
では、月15万円ではかわいそうだと思って、親御さんが甲野太郎さんにお金を仕送りをした場合どうなるでしょうか? この場合、甲野太郎さんの収入と捉えられて、もらえる生活扶助の金額が減ることになります。つまり、月15万円という金額は変わりません。もっとも、お金ではなく、食料品・衣服などの場合は、常識の範囲内であれば、収入とはされないでしょう。
親亡き後に、障害のある我が子がギリギリの生活しかできないとなると、なんとかしてあげたい、生活保護を受けないですむだけの財産を残したいと思うのが親心だと思います。しかし、親亡き後の期間は決して短くはありません。すべての親御さんが十分な財産を残せるわけではありません。
そこで、生活保護において収入と扱われない形で、障害のあるお子さんにお金を残す方法があります。それが「しょうがい共済」(障害者扶養共済制度)です。この制度は生命保険の一種ですが、民間のものではなく公的なものです。この制度を利用すると、親亡き後に月額最大4万円を障害のあるお子さんに一生涯残すことができます。この最大4万円というのは、障害のあるお子さんが生活保護を受けていても、お子さんの収入とはなりません。例えば、甲野太郎さんの親御さんが「しょうがい共済」に加入していれば、生活保護費、障害年金の合計15万円にしょうがい共済の4万円がプラスされます。つまり、甲野太郎さんは、生活保護を受給していても、月額19万円は確保されることになります。
しょうがい共済(障害者扶養共済)について詳しく知りたい方は、「親亡き後に障害のある子にお金を残す方法〜しょうがい共済」をご覧ください。
繰り返しになりますが、障害者(特に知的障害者)の収入の現状を考えると、親亡き後に障害のあるお子さんが生活保護を受給することはあり得ます。親御さんとしても、生活保護の制度についてはある程度知っておいた方がいいと思います。そして、生活保護費を年々減らし、また、必要な人であっても生活保護を受給させないようとする国や地方自治体の態度を注意深く見守っていくことが、障害のあるお子さんのためにも重要です。