はじめに

avatar
相談者
私たちには知的障害のある子どもがいます。私たちが先になくなった後に、子どもがお金に困らないようにしてあげたいと思っています。
avatar
弁護士
親亡き後の備えということですね。
avatar
相談者
はい、そうです。聞いたところによると、信託というものがあるそうなんですが、よくわからなくて。
avatar
弁護士
障害のあるお子さんに財産を残す方法の一つとして信託を利用できます。では、信託の基礎知識と活用方法について解説します。

信託の基礎知識

信託とは?

そもそも信託とは、なんでしょうか?

信託とは、自分の財産を信頼できる人に託して、自分や大切な人のために、その財産を管理運用してもらうことです。

信託の関係者

信託の当事者は、次の3つです。

  1. 委託者(財産を託す人)
  2. 受託者(財産を託される人)
  3. 受益者(信託によって利益を得る人)

委託者とは?

財産を託す人のことを「委託者」といいます。

障害のあるお子さんに親亡き後のために財産を残す場合には、親御さんが委託者になります。

受託者とは?

委託者から財産を託される人のことを「受託者」といいます。

障害のあるお子さんに親亡き後のために財産を残す場合には、受託者は次のどちらかになります。

  1. きょうだいなどの親族
  2. 信託銀行や信託会社
avatar
弁護士
なお、仕事として、お金をもらう場合には、信託銀行や信託会社でなければ、受託者にはなれません。したがって、弁護士などの法律の専門家に受託者になってもらうことはできません。この点が成年後見とは違います。

受益者とは?

信託によって利益を得る人を「受益者」といいます。

例えば、親御さんが1000万円のお金を、信託銀行に対して、生活費として毎月10万円を障害のある子どもに渡してほしいと信託します。信託された財産から毎月10万円という利益を得るお子さんが受益者となります。

受益者は一人とは限らず、複数人でも大丈夫です。また、委託者 = 受益者とすることもできます。さらに、委託者が生きている間は委託者を受益者に、委託者の死後は受益者をお子さんに変更することも可能です。このような柔軟さが信託の長所です。

信託財産

信託財産の内容

信託された財産を「信託財産」といいます。この信託財産の内容には特に制限はありません。つまり、お金以外にも不動産や株式などの有価証券なども信託することはできます。

avatar
弁護士
お子さんに財産を残す4つの方法(遺言、生前贈与、生命保険、信託)のうち、生命保険はお金しか残すことはできません。

信託財産は受託者のものになること

信託を利用する上で、理解しておきたい重要な信託財産の特徴を説明します。それは、信託された財産の所有権は、受託者に移ることです。例えば、親御さん名義の不動産を信託した場合、信託によって受託者の名義に変更されます。

これだけ聞くと、受託者に信託財産を使い込まれるのではないかと心配になる方もいるかと思います。しかし、このような心配には対策がされているので、リスクは小さくなっています。逆に、受託者に所有権が移ることの大きなメリットもあります。

この点については、基礎知識としては難しいところなので、詳細は別の記事で解説したいと思います。

信託の活用方法

次に、障害のある子の親亡き後に備える場合に、信託をどのように活用できるかについて、2つ例を挙げたいと思います。

障害のある子の生活費を毎月仕送りする

親御さんが蓄えたお金を、障害のある子に残したいけれど、いっぺんに渡すのは心配ではありませんか? 例えば、たくさんのお金があることで、無駄遣いや浪費してしまうのではないか、お金を騙し取られてしまうのではないかというものです。

このような心配は、信託を活用すると解消することができます。委託者である親御さんが、受託者に対して、信託財産であるお金の中から、毎月一定額を仕送りするということを指示すれば、親御さんが亡くなった後も、信託財産がなくなるまで、毎月一定額が障害のあるお子さんに渡ります。

このように定期的にお金を渡すというのは、生命保険でも実現することはできます。しかし、定期的な仕送りに加えて、臨時な出費に対して必要な額を渡すという柔軟さはありません。このような柔軟さがあるのは、信託と成年後見だけです。

子どもに残した自宅の管理

障害のあるお子さんに、慣れ親しんだ自宅を残したいけれど、お子さんには自宅のメンテナンスや固定資産税の支払いなどが難しい場合に、信託を活用することができます。今まで親御さんがしていたメンテナンスや諸費用の支払いを受託者に担ってもらい、お子さんは今までどおり住むということができます。

もっとも、同様のことは、お子さんに成年後見人・保佐人などをつけることでも可能です。ただ、信託と成年後見との違いは、ご自宅の所有者が、信託の場合は受託者で、成年後見の場合はお子さんという点にあります。

この違いは、自宅がグループホームや施設入所で不要になったときや、障害のあるお子さんが亡くなった後の自宅の処分に違いがでます。信託の場合は成年後見より柔軟に自宅を売却できます。また、お子さんが亡くなった後に自宅をどのように処分するかを委託者である親御さんが指示することができます。ここまでの柔軟さは成年後見にはありません。

まとめ

以上が、障害のあるお子さんに財産を残す方法の1つである信託についての初歩的な解説となります。この記事で紹介した信託の特徴・メリットは、次の2つです。

  1. 信託財産の活用方法について、財産を残す親御さんがコントロールできること
  2. 信託財産の活用方法の柔軟性

信託のこのメリットは、他の方法で代用し実現することは難しいです。

信託には、この他にも「倒産隔離機能」と呼ばれる重要なメリットがあります。この点については、基礎知識とは言えないので、別の記事で紹介したいと思います。