はじめに



動画で解説
債務整理とは?
借金やクレジットカードでの買い物などの返済について、
・返済をゼロ
・返済総額の減額
・支払いを待ってもらう
・月々の返済額の減額
・支払回数を増やす
などを実現するための法的な手続き全般を指します。返済で日常生活に支障が生じている状態を改善するためのものです。
なお、債務整理の対象は、お金の支払いであればなんでも含まれます。
債務整理のメリット
債務整理のメリットは、借金などの整理ができるということの他にもあります。
それは、借金の取立てや支払いの督促がストップすることです。つまり、弁護士などが受任したり、裁判所から特定調停の申立てがなされたりしたことが書面で通知されると、取立てがストップします。
取立てがストップする理由は、法律が禁止しているからです。例えば、貸金業者を規制する貸金業法は、次のように定めています。
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
(1から8省略)
9 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
貸金業法21条1項9号
また、サービサーを規制する債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)も、次のように定めています。
債権回収会社は、債務者等が特定金銭債権に係る債務の処理を弁護士又は弁護士法人に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとった場合において、その旨の通知があったときは、正当な理由がないのに、債務者等に対し、訪問し又は電話をかけて、当該債務を弁済することを要求してはならない。
債権管理回収業に関する特別措置法18条8項
この記事には「弁護士など」という表現が多くでます。「弁護士と司法書士」を「弁護士など」と表現しています。
司法書士は、債務整理の仕事を受けることができる範囲が、弁護士と比べると制限されています。弁護士は債務整理すべてについて制限なく仕事が受けられます。しかし、司法書士に債務整理を相談をしても、仕事を受けられない場合がありますのでご注意ください。
債務整理のデメリット・リスク
他方、債務整理にもデメリットはあります。それは、指定信用情報機関の信用情報がいわゆる「ブラック」になることです。ブラック情報が消えるまで、新たな借入や新規クレジットカード発行の審査が通りにくくなるというデメリットがあります。
借金などが返済できずに、債務整理するわけですから、このデメリットはやむを得ないでしょう。むしろ、債務整理をいいきっかけとして、今後は借金などをせずとも生活ができるように立て直しをするためには、必ずしもデメリットとは言えないかもしれません。
債務整理の種類
さて、債務整理の意味、そのメリットとデメリットがご理解できたと思います。次に、債務整理の具体的な方法を紹介します。債務整理の方法は、一般的に、次の4種類です。
- 任意整理
- 特定調停
- 自己破産
- 個人再生
この債務整理の4つの種類について、どのようなものか、そのメリットとデメリットについて、これから解説します。
任意整理とは?
1つ目の方法は、任意整理です。これは、弁護士などが、債権者(支払相手)と話し合って、
- 債務総額を減らしたり
- 月々の支払額を減らしたり
- 分割の回数を増やしたり
してもらう交渉をいいます。
任意整理のメリット
任意整理のメリットは、次のものがあります。
- 他の債務整理の方法と比べて短期間で終わります
- 同居する家族などに知られずに債務整理ができます
任意整理のデメリット
任意整理のデメリットは、次のとおりです。
- 減額の程度は少ないため、一定の支払能力が必要になります
- 弁護士などに依頼する必要があるので、その費用が必要になります
特定調停とは?
特定調停とは、債務の支払いができない人が、債権者との話し合いで、債務の整理をする特別な民事調停のことです。
特定調停は、「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」によって定められています。
特定調停のメリット
特定調停のメリットは、次のとおりです。
- 手続きの費用が安く、債権者1社につき1000円程度
- 弁護士に依頼せずに債務整理ができるので、弁護士の費用が不要
特定調停のデメリット
特定調停のデメリットは、次のとおりです。
- 調停の申立てや平日に行われる調停の出席、話し合いをすべて自分でしなければならない
- 双方で和解した内容が守れないと、すぐに給料などの差押えがされるリスクがあります
特定調停について、さらに詳しく知りたい方は、東京簡易裁判所の「特定調停申立てQ&A」をご覧ください。
自己破産とは?
自己破産とは、債務超過(資産<債務)や支払不能になった人の資産と債務(負債)を整理し、残った負債をなくす法的手続全体のことです。
自己破産は、「破産法」という法律によって定められています。
自己破産のメリット
自己破産のメリットは、税金等の滞納などを除いて債務がゼロになることです。債務整理の4つの種類・方法のうち、最大のメリットになります。
なお、ゼロにならない債務として、次のようなものがあります。
- 所得税、住民税、固定資産税などの税金
- 国民健康保険料
- 国民年金
- 婚姻費用、養育費など
自己破産のデメリット
自己破産のデメリットは、次のとおりです。
- 99万円を超える財産は失うこと
- 職業制限
- 同居の家族に内緒にするのは困難
- 官報への掲載
個人的には、自己破産の一番のデメリットは、官報への掲載だと思っています。官報に掲載された情報は、誰でも、図書館などの無料データベースで見ることができます。つまり、過去に破産したという情報は、誰でも探そうと思えば探すことができてしまいます。この点はご注意ください。
個人再生とは?
個人再生とは、債権者の同意を得て、債務を大幅にカットして、3年から5年かけて完済する法的手続のことです。
個人再生は、「民事再生法」という法律で定められています。
個人再生のメリット
個人再生のメリットは、次のとおりです。
- 債務総額が5分の1になる(ただし、100万円未満にはならない)
- 一定の条件をクリアすれば自宅などの財産を失わない
個人再生で一番のメリットは、一定の条件をクリアすれば自宅を失わずにすむことです。住宅ローンがまだだいぶ残っているけど、住宅ローン以外の債務が減れば、住宅ローンを払い続けることができる場合に、自宅を失わずに、債務の大幅な減額ができます。
個人再生のデメリット
個人再生のデメリットは、次のとおりです。
- 再生委員への報酬が必要となる場合がある
- 官報に掲載される
- 家族に内緒にするのは困難
まとめ
以上で、債務整理の意味、そのメリットとデメリット、債務整理の4つ種類・方法、つまり、任意整理、特定調停、自己破産、個人再生の意味とそのメリットとデメリットについて解説しました。
どの方法を選ぶかを検討する際に、この記事を参考にしてください。この記事が役に立った場合は、Twitter、facebookでシェアしてもらえると幸いです。