はじめに






違いを理解するための3つのポイント
これから、遺言、生前贈与、生命保険、信託の意味について解説します。この4つの方法の違いがわかるように3つのポイントに注目して説明します。
親子以外の第三者の有無
1つ目のポイントは、お子さんに財産を残すうえで、親子以外の第三者が必要かどうかという点です。財産を渡す親御さんと、財産を渡されるお子さん以外の第三者が必要になる場合に、その第三者にお金を支払う可能性があるので大切です。
残せる財産の種類
2つ目のポイントは、お子さんに残す財産の種類です。財産の種類として、お金以外の不動産(土地建物)、有価証券(株式、国債など)を残せるか、お金だけなのかという点です。
残せる財産の範囲
3つ目のポイントは、お子さんに残す財産の範囲です。親御さんが所有している財産の範囲に限られるのか、それ以上の財産を残すことができるかです。
障害のある子に財産を残す4つの方法
遺言
遺言とは、自分の死後においても、できるだけその人の財産を自由に処分できるようにするためのものです。
遺言の場合は、遺言で財産を残す親御さん(遺言者といいます)と、遺言で財産を受け取るお子さん(受遺者)以外に第三者は必須ではありません。
残せる財産の種類に制限はなく、お金、不動産(土地建物)、有価証券(株式、国債など)などを残すことができます。
残せる財産の範囲は、親御さんが所有している財産全てを残すことができます。ただし、お子さんが2人以上いて、1人に全部の財産を残すことは必ずできるわけではありません。
遺言についてさらに詳しく知りたい方は「遺言とはなにか?」をご覧ください。
生前贈与
生前贈与とは、生前に行われた贈与(無償で財産を与えること)のことです。お子さん名義の預貯金口座に、毎月一定額を振り込むという方法がよく使われています。
生前贈与は、財産を渡す人と財産を受け取る人の2人がいれば成立する契約です。そのため、第三者は必須ではありません。
残せる財産の種類と範囲は、遺言と同じです。
遺言と生前贈与の違いは、財産が移る時期が死後か生前かの違いがあります。それよりも重要な違いは、遺言は財産を残す親御さんの意思のみで一方的に成立しますが、生前贈与はお子さんの財産を受け取るという意思が必要な点です。お子さんが重度の障害があると、この受け取るという意思を示すことができないこともありますので注意が必要です。
生命保険
生命保険とは、人の生存または死亡に関して保険金が支払われる保険です。
生命保険は、保険料を受け取り、保険金を支払う保険会社という第三者が不可欠です。この点、遺言や生前贈与とは違います。
残せる財産の種類としては、お金に限られます。そのため、不動産などお金以外の財産を残す方法としては使えません。
ただし、残せる財産の範囲については、支払った保険料の合計金額を上回る保険金が支払われる可能性があります。例えば、保険料を支払う親御さんが保険料を支払い切るまで亡くなった場合や、お子さんが亡くなるまで支払われる終身年金で、お子さんが長生きした場合などは、保険料合計額 ≦ 保険金額となる可能性があります。
公的な生命保険である障害者扶養共済(しょうがい共済)については、「親亡き後に障害のある子にお金を残す方法〜しょうがい共済」をご覧ください。
信託
信託とは、親御さんがお子さんのために使われるように、信頼できる第三者に財産を託すことをいいます。
信託は、財産を託す第三者が必要になります。第三者として、信託会社や信託銀行、親族が一般的です。信託会社や信託銀行の場合、信託のための報酬を支払う必要があります。
残せる財産の種類には、遺言や生前贈与と同じく制限はありません。
残せる財産の範囲も、遺言や生前贈与と同じく、親御さんが所有しているものに限られます。
まとめ
以上の説明をわかりやすく表にすると、次のようになります。
遺言 | 生前贈与 | 生命保険 | 信託 | |
---|---|---|---|---|
第三者 | なし | なし | 必須 | 必須 |
財産の種類 | 制限なし | 制限なし | お金のみ | 制限なし |
財産の範囲 | 所有物 | 所有物 | 保険料合計≦保険金になることも | 所有物 |
どの方法が一番いいのかは、ケースによって異なりますので、一概にはいえません。ケースごとにどの方法が一番いいかについて、このサイトで検討していきたいと思います。