遺言書を作るのはまだ早い?

avatar
相談者
私たちには、知的障害のある子どもがいます。親亡き後について勉強しています。将来的には子どもに私たちの財産を残すために遺言書を書こうと思っています。
avatar
相談者
将来に先延ばしすると、万が一のことが起きたときに、お子さんが困ることがあるかもしれません。
avatar
相談者
そうなんですか!? もし遺言書を残さすに死んだ場合、どんな不利益があるんですか?
avatar
相談者
それでは、障害のあるお子さんがいる親御さんが、遺言書を作らずに亡くなられた場合、どのようなことが生じるかについて、4つのケースに分けて、解説します。

4つのケースの紹介

障害のあるお子さん(特に知的障害や精神障害)を持つ親御さんが、遺言書を用意せずに亡くなった場合、どのような不利益、困ったことが生じるかを解説します。できるだけわかりやすく解説するために、両親が結婚しているケースと、死別や離別によってひとり親になったケースに分けて考えます。そして、この2つのケースそれぞれについて、障害のあるお子さんが未成年の場合と成人していた場合に分けて解説します。

つまり、次の4つのケースについて、それぞれどのような不利益・困ることが生じるか解説します。

  1. 未成年の子どもがいて、ひとり親のケース
  2. 成人した子どもがいて、ひとり親のケース
  3. 未成年の子どもがいて、結婚している両親のケース
  4. 成人した子どもがいて、結婚している両親のケース

ひとり親のケース

それでは、障害のあるお子さんがいるひとり親のケースにおいて、遺言書を残さないとどういうことになるかを解説します。

子どもが未成年の場合

親権者の不在

ひとり親家庭において、子どもが未成年の場合、その子どもの親権者はひとりということになります。唯一の親権者が亡くなるということは、その子どもには親権者がいなくなることを意味します。ひとり親になった理由が死別の場合は当然ですが、離婚の場合も単独親権者が死亡しても、同居していないもう一人の親が自動的に親権者に戻るわけではありません。

未成年後見人の選任

それでは、ひとり親を亡くした子どもの面倒は誰が見るのでしょうか?

死別やもうひとりの親が子どもを養育できない場合には、家庭裁判所が未成年後見人を選任したら、その選任された未成年後見人が、子どもが成人するまでその子の親代わりとして監護養育をすることになります。

また、離別でもうひとりの親が子どもの養育を望んでいる場合は、上記未成年後見人か、家庭裁判所の許可を得て親権者に戻ったひとり親が、子どもが成人するまでその子どもの面倒を見ることになります。

なお、未成年後見人などが子どもと一緒に暮らせない事情がある場合には、児童養護施設や里親に預けられることになります。

遺言で未成年後見人の指定

誰が未成年後見人として、子どもの面倒をみるかについて、唯一の親権者が亡くなっているので、その意向を反映することは難しいです。ですので、亡くなったひとり親にとって望まない人物が残した子どもの監護養育をすることがあり得ます。

しかし、このような事態は回避することができます。それは、遺言書に唯一の親権者である自分が死んだときの未成年後見人を指定することです。このように遺言書に未成年後見人を指定しておけば、ひとり親が亡くなった後に、役所に届出をすれば、指定された未成年後見人が、残された子どもの監護養育をすることになります。

100%確実ではありません

遺言書に未成年後見人を指定したとしても、離婚したもうひとりの親が親権者に戻りたいと望み、それを家庭裁判所が認めた場合には、もうひとりの親が親権者として残された子どもの監護養育をすることになります。したがって、遺言書で未成年後見人を指定すれば、望まない人物が子どもの監護養育をすることを100%回避できる訳ではありません。ご注意ください。

まとめ

以上のことから、ひとり親で子どもを育てている人は、財産の有無にかかわらず、遺言書で信頼できる未成年後見人を指定しておくことが、万が一の備えとして大事だと思います。このことは、残される子どもに障害のあってもなくても当てはまります。

子どもが成人している場合

相続手続きの問題

子どもが成人している場合は、未成年の場合のように、望まない人物が残した子どもの監護養育をするという問題は生じません。しかし、子どもが成人していても、知的障害や精神障害があって、判断能力に問題があると、別の問題が生じます。それは、ひとり親が亡くなった際の相続の手続きを障害のある子どもができるのかという問題です。例えば、預貯金の解約や名義変更、不動産の登記手続きなどです。

もし、障害のない成人した子どもが他にもいれば、その子どもも相続人ですので、相続の手続きを任せることはできると思います。が、一人っ子の場合はそうもいきません。

遺言執行者の指定

このような問題を回避する方法があります。それは遺言書を作成し、遺言執行者を指定することです。遺言執行者とは、遺言書に書かれている内容を実現する権限が与えられている人です。

例えば、遺言書に預貯金は、障害のある子どもに相続させると記載していた場合、遺言執行者が指定されていれば、その預貯金の貯金の解約・払い戻しや名義変更の手続きは、遺言執行者がすべてできます。

遺言執行者は誰でも(未成年者や破産者を除いて)指定できますので、信頼できる人に遺言執行者になってもらえます。ですので、障害のない子ども、祖父母、きょうだいを遺言執行者に指定することもできます。

合わせて読みたい記事

両親の一方が亡くなるケース

次に、離婚をしていない両親の一方が亡くなる場合に、遺言書を残していないとどうなるかを解説します。

子どもが未成年の場合

利益相反と特別代理人

両親が結婚をしている場合は、親権者は両親です。そのため、どちらか一方が亡くなっても、もうひとり親権者が残っていますので、上での解説したような問題は生じません。

両親の一方が亡くなると、残された配偶者とその子どもは、ともに相続人となります。遺言書を残さなかった場合、亡くなった親名義の財産について、相続人の間で、遺産をどのように分けるかを話し合うことになります(これを遺産分割協議といいます)。

この場合、残された配偶者が子どもの親権者であったとしても、未成年の子どもと話し合いをせずに、遺産の取り分を独断で決めることはできません。相続において、残された配偶者と未成年の子どもは対等な関係にあり、残された配偶者の取り分が増えれば、必然的に未成年の子どもの取り分は減る関係にあります。このような利益が対立する場合には、例え親子であっても、好き勝手にはできません。

このような場合、未成年の子どもの利益のみを尊重する特別代理人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。そして、その特別代理人と話し合いをして、遺産の分け方や取り分を決めます。

なお、特別代理人の候補者を申し立てる方で挙げることはできます。が、家庭裁判所の判断によっては弁護士などが選任されることもあります。その場合は弁護士への報酬の支払いが必要になります。

遺言書の作成

特別代理人の選任を避ける方法はあります。それは、遺言書で遺産の分け方や取り分を決めて、かつ、すでに説明した遺言執行者を指定する方法です。遺言執行者を残された配偶者に指定しておけば、残された配偶者ひとりで、遺言書に書かれた分け方になるように相続の手続きをすることができます。

子どもが成人している場合

障害のある子どもが成人している場合には、ひとり親のケースとは違って、残された配偶者が中心となって相続の手続きをすることになるでしょう。しかし、問題がないわけではありません。

どういうことかというと、相続の手続きの際には、障害のある子どもの委任状などの書類が必要となります。その委任状は障害のある子どもが署名して印鑑を押す必要があります。残された配偶者(親)が勝手に書くことは許されません。そして、障害のある子どもが自分のしていることを理解した上で、署名押印をしないと、その委任状は無効ということになります。委任が無効となると、相続手続き自体が無効になるリスクがあります。

このようなリスクを遺言書を作成することで避けることができます。例えば、遺言書に遺産の分け方や取り分を明記して、かつ、残された配偶者を遺言執行者に指定すれば、残された配偶者ひとりで、相続の手続きを完了できます。

障害のある子どもが成人しており、結婚している両親の一方が亡くなる場合は、他の3つのケースよりも問題は少ないです。が、遺言書を作成しておいた方が望ましいとはいえます。

最後に

以上が、障害のあるお子さんがいる親御さんが遺言書を残さずに亡くなるとどのような不利益、困りごとが生じるか、そして、それを回避する方法についての解説でした。あらゆるケースにおいて、遺言書を作成しておいた方がよいことがわかるかと思います。

遺言書は自分で作成すれば大した費用はかかりません。今はまだ元気だとしても、元気なうちに遺言書の作成にチャレンジしてみたらいかがでしょうか。

合わせて読みたい記事