目次
はじめに




婚姻と養子縁組の異同一覧表
○×は法的効果の有無、△は法的効果はあるけど他方より劣るものを意味します。
法的効果 | 婚姻 | 養子縁組 |
---|---|---|
親族になる | ○ | ○ |
同氏 | ○ | △ |
同居義務 | ○ | × |
生活費分担 | ○ | △ |
貞操義務 | ○ | × |
相続権 | ○ | △ |
近親者固有の損害賠償請求 | ○ | ○ |
共同親権 | ○ | × |
面会交流 | ○ | × |
特別養子縁組 | ○ | × |
婚姻と養子縁組の異同
親族になる
婚姻と養子縁組では、親族になるという法的効果は共通しています(民法725条・727条)。
しかし、次に解説するように大小さまざまな点で違いが見られます。
同氏
婚姻も養子縁組も同じ氏(苗字)になります(民法750条・810条)。ただし、婚姻はどちらかを選ぶことはできるのに対して、養子縁組は年上の方の氏にしかなれません(民法750条・810条)。
同居義務
夫婦間には同居義務がある(民法752条)のに対して、養親子間にはありません。
関係悪化や別れ
養親子間には貞操義務はありませんので、浮気をされても我慢するしかありません。婚姻のように浮気相手などに慰謝料を請求することはできません。
婚姻は離婚の際に2人で協力して築いた財産を半分よこせと請求できます(民法768条)。養子縁組を解消する際には、それを請求することは難しいです。
夫婦間は婚姻費用を分担する義務があり、生活費を請求することができます(民法760条)。他方、養親子間では、一方が余裕がない限り、生活費を負担する義務はありません(民法877条)。
子どもに関するもの
カップルの一方に血の繋がった未成年の子どもがいる場合をイメージしてください。この場合、婚姻し、その未成年の子どもと養子縁組をすれば、夫婦は共同親権をもちます(民法818条)。
養子縁組の場合、養親に未成年の子どもがいると、養子とその未成年の子どもは兄弟姉妹になります(民法727条・809条)。逆に,養子に未成年の子どもができると、養親はその未成年の子どもは、養祖父母になります(民法727条・809条)。兄弟姉妹、祖父母は親権はもてませんので、もちろん共同親権はもてません。なお、養子縁組前に養子に未成年の子どもがいた場合には、養親は未成年の子の養祖父母にはなりません。
父母は子どもの面会交流を求めることはできます(民法766条)。しかし、祖父母・兄弟姉妹には一般的に面会交流は認められないので、養子縁組したカップルの場合、親権者が未成年の子どもに会わせてくれなくても我慢するしかありません。
現行法上、夫婦でなければ特別養子縁組をすることはできません(民法817条の3)。
相続
配偶者と養子は相続権が常にあります(民法890条・887条)。しかし、養親は養子に子どもがいると相続権はありません(民法889条)。
その他
パートナーが交通事故などで死亡または植物状態になった場合、配偶者も養親子も固有の損害賠償請求権が認められます(民法711条)。
養子縁組で十分な場合とそうでない場合
親族になりたいだけで、経済的に相手に頼りたくない、パートナー以外とも性行為をしたい、未成年の子どもはいないし、ほしくもないカップルにとっては養子縁組で十分といえるかもしれません。
しかし、親族になるだけではなく、困ったときには経済的に頼りたい、浮気はしてほしくない、未成年の子どもが現にいる、またはほしい場合には、養子縁組では不十分ということになります。