生命保険信託ってなに?

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相談者
私たちには知的障害のある子どもがいます。私たちが先になくなった後に、子どもがお金に困らないようにしてあげたいと思っています。
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弁護士
親亡き後の備えということですね。
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相談者
はい、そうです。知的障害や自閉症などの障害のある子どものために生命保険信託があると聞きました。ただ、どういうものかよくわからなくて。
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弁護士
確かに、障害のあるお子さんに財産を残す方法の一つとして、生命保険信託という選択肢があります。では、生命保険信託とはどういうもので、どんなメリット、デメリットがあるか解説します。

信託の基礎知識

生命保険 + 信託

生命保険信託は、生命保険と信託が合体したものです。生命保険信託を理解する上で、まず信託についての初歩的な理解が必要となります。

信託とは?

そもそも信託とは、なんでしょうか?

信託とは、自分の財産を信頼できる人に託して、自分や大切な人のために、その財産を管理運用してもらうことです。

信託の関係者

信託の当事者は、次の3つです。

  1. 委託者(財産を託す人)
  2. 受託者(財産を託される人)
  3. 受益者(信託によって利益を得る人)

委託者とは?

財産を託す人のことを「委託者」といいます。

障害のあるお子さんに親亡き後のために財産を残す場合には、親御さんが委託者になります。

受託者とは?

委託者から財産を託される人のことを「受託者」といいます。

障害のあるお子さんに親亡き後のために財産を残す目的で、生命保険信託を利用する場合には、受託者は信託銀行か信託会社のどちらかになります。

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弁護士
厳密にいえば、受託者を信託銀行・信託会社以外の人、例えば親族にすることは可能です。しかし、生命保険会社は、決められた信託銀行・信託会社以外はOKとしないと思われます。
信託の手数料は要チェック

受託者が営利企業である信託銀行や信託会社ということは、信託の手数料がかかることを意味します。ですので、生命保険信託を利用する場合には、信託の手数料にはどういう種類のものがあって、どれぐらいかかるものかという点を十分に検討してください。

受益者とは?

信託によって利益を得る人を「受益者」といいます。

障害のある子の親亡き後のためなので、受益者は障害のあるお子さんということになります。

もっとも、受益者は一人とは限らず、複数人でも大丈夫です。なので、お子さんが二人以上いても大丈夫です。

また、配偶者が生きている間は受益者を配偶者にして、配偶者が亡くなった後に障害のあるお子さんを受益者にするということもできます。

このような柔軟さが信託の長所です。

信託財産

信託財産の内容

信託された財産を「信託財産」といいます。この信託財産の内容には特に制限はありません。つまり、お金以外にも不動産や株式などの有価証券なども信託することはできます。

生命保険信託の場合は、簡単にいうと、生命保険金が信託財産ということになります。

信託財産は受託者のものになること

信託を利用する上で、理解しておきたい重要な信託財産の特徴を説明します。それは、信託された財産の所有権は、受託者に移ることです。ですので、生命保険金は、受託者である信託銀行か信託会社が取得します。

もし信託銀行や信託会社が倒産したらどうなるでしょうか? 信託財産である生命保険金は無くなってしまうのでしょうか? ご安心ください。信託財産である生命保険金は、信託銀行等のものになりますが、会社が倒産しても守られる仕組みになっています。

信託の活用法

信託を利用するメリットはどこにあるでしょうか? 障害のある子の親亡き後という観点からすると、次の3つが挙げられます。

  1. 亡くなった親の財産を一度に渡すのではなく、分割で渡すことができる
  2. 残した財産が騙し取られる可能性が低い
  3. 受益者を柔軟に決めることができる
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弁護士
障害のあるお子さんの判断能力やお金の管理能力が心配な場合、信託の利用を検討してみてもよいと思います。

生命保険信託

生命保険信託とは?

今までの説明は、「信託」そのものの特徴です。つまり、生命保険信託独自の特徴ではありませんのでご注意ください。

生命保険信託は、簡単にいうと、生命保険を信託財産とする信託です。言い換えると、生命保険で信託財産を作ることになります。

生命保険信託が向いている人、向いていない人

ですので、障害のあるお子さんに残す財産の内容として、ご自宅などの不動産がある場合には、生命保険信託だけでは不十分ということになります。また、残す財産が低金利の預貯金であれば生命保険信託に変更するのは楽ですが、積み立てNISAやiDeCoで資産形成をしている場合には生命保険信託に変更すると、それらにある節税などのメリットを失うことになります。

したがって、預貯金以外の財産がある方は、あまり生命保険信託は向かないといえるでしょう。

他方、預貯金以外の財産がない方は、普通預金よりは生命保険の方が利回りがよいことが多いため、生命保険信託を利用するメリットがあります。

生命保険信託の注意点〜取り扱っている会社が少ない

生命保険信託の注意点を紹介します。それは、生命保険信託を取り扱っている生命保険会社・信託銀行・信託会社の数が限られているため、選択肢が少ないことです。正確な数は分かりませんが、選択肢の数は一桁だと思います。

生命保険信託の商品で違いが出るところといえば、生命保険の部分になります。生命保険信託で取り扱っている生命保険商品が他の生命保険商品と比べてあまり魅力的ではないこともあり得ます。

また、現在、加入している生命保険を生命保険信託に変更したいと思っても、加入している生命保険会社が生命保険信託を取り扱っていなければ、利用できません。

最後に

以上で、生命保険信託の初歩的な解説は終了です。生命保険信託には、向き不向きがあったり、選択肢が限定されているというデメリットがあります。生命保険信託の利用を検討する場合には、遺言代用信託や家族信託などの他の選択肢と比較検討を十分に行ってください。

生命保険は一度加入すると、支払った生命保険料の合計が解約返戻金を上回るには10年ぐらいかかるものもあり、早い段階で解約すると損することがあります。これは生命保険信託にも当てはまりますので、特にご注意ください。