はじめに

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相談者
私たちの子どもには障害があります。私たちがなくなった後に、子どものお金の心配を減らすために、少ないですが財産を遺言で残そうと思っています。
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弁護士
それはいい考えですね。遺言のことで何かわからないことでもあるんですか?
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相談者
まだ元気なので先のことですが、今のうちから準備をしておこうと思っています。練習というわけではないのですが、自筆証書遺言を書いてみようと二人で話しています。
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弁護士
お試しには自筆証書遺言はピッタリですね。
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相談者
ただ、自筆証書遺言は書き方を間違えると無効になってしまうと聞きました。無効にならないためにも、自筆証書遺言の要件について教えてください。

動画で解説

自筆証書遺言とは?

遺言の原則形の一つである「自筆証書遺言」とは、全文(財産目録を除く)、日付、氏名が自筆で書かれて、印鑑が押されている遺言のことです。

同じく遺言の原則形である「公正証書遺言」にはない自筆証書遺言のメリットは、次のとおりです。

  • 誰にも知られずに作ることができる
  • 必要なのは紙とペンと印鑑だけ(=費用はほとんどかからない)

このようなメリットはあります。が、一方でデメリット、リスクがありますのでご注意ください。自筆証書遺言のリスクは、次のとおりです。

  • 勉強しないと無効になりやすい
  • 偽造
  • 相続人間で有効無効で争われる
無効の意味

遺言書が無効になるとは、どういう意味でしょうか? それは遺言に書かれていることが法的な効力がないという意味です。遺言が無効になると、望んだように財産を残すことができなくなり、相続人同士の話し合いで分けられることになります。

自筆証書遺言の要件

せっかく自筆証書遺言を書いても、自筆証書遺言の要件を守らなかったばかりに無効になってしまっては困ります。なお、要件とは、自筆証書遺言が法律上有効となるために必要な条件のことです。

次からは、無効を避けるために自筆証書遺言の4つの要件について、一つ一つ解説します。

自筆

自筆証書遺言 は、全文(財産の目録を除いて)を自分で書かなければなりません。その理由は、自筆であれば本人の真意で書かれたものであるといえるからです。

以下の方法で作成された遺言書は無効になりますのでご注意ください。

  • パソコン
  • ボイスレコーダーに録音
  • 動画に録画
パソコンで下書き

もちろん、下書き段階から手書きである必要はありません。パソコンなどで下書きを作成し、完成したら書き写せば問題ありません。

紙とペンはなんでも構いませんが、消えるペンはやめておきましょう。また、紙はチラシの裏紙などにすると、真意を疑われてしまうのでやめておきましょう。なお、カーボン紙での複写もOKです。

財産目録

先ほど「全文(財産目録を除いて)」と書きました。この財産目録については、「遺言書の一部をパソコンで作成する方法」で詳しく解説しています。興味がある方はご覧ください。

日付

自筆証書遺言 は、日付も自分で書かなければなりません。その理由は、次のとおりです。

  1. 判断能力の有無を判断する時期を特定するため
  2. 遺言が複数ある場合、有効な最新版を確定するため

和暦、西暦のどちらでも構いませんが、年月日を明確に書きましょう。

年月日を明記しない場合で有効なものと無効なもの例は、次のとおりです。

  1. ○ 私の100歳の誕生日
  2. ○ 長男の結婚式の日
  3. × 結婚記念日
  4. × 2020年4月吉日

3.は何年なのかわかりません。また、4.は何日なのかわかりません。ですので、両方とも無効です。

氏名

自筆証書遺言 では、氏名を自分で書かなければなりません。その理由は、遺言を書いた人が誰かを特定するためです。

特定されるのであれば、次のようなものもOKです。

  • 氏または名のみ
  • 旧姓
  • 通称
  • ペンネーム
  • 芸名
  • 雅号
  • ハンドルネーム

もっとも、ご自身では特定できると思っても、特定できるとは限りません。ですので、無効になるリスクを減らすために、戸籍上の氏名を書いた方が無難です。

印鑑を押す

印鑑の種類

自筆証書遺言 は、印鑑を押す必要があります。その理由は、日本では氏名の横に印鑑を押すのが一般的で、本人の真意によるものとされるからです。

有効な印鑑の例と無効な印鑑の例は次のとおりです。

  1. ○ 実印
  2. ○ 認印
  3. ○ 三文判(安い印鑑)
  4. ○ 拇印、指印
  5. × 花押(かおう、署名の代わりの記号や符号)

もっとも、自筆証書遺言は、公正証書遺言よりも、残された家族(相続人)間で、無効であると争われやすいため、真意に基づくものであることを示すためにも、実印を使用した方がよいです。

印鑑を押す場所

印鑑を押す場所は、一般的に、氏名の横や下です。ただ、次のような場合も有効とされています。

  • 製本された遺言書の一部
  • 遺言書を入れた封筒の封じ目

しかし、特に理由がない限り、氏名の横または下に印鑑を押すようにしましょう。

封印について

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相談者
遺言書を封筒に入れて封印はするんですか?
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弁護士
自筆証書遺言では封筒に入れて封印する必要はありません。もちろん、封筒に入れて封印しても構いませんが、要件ではありませんので。

自筆証書遺言は、秘密証書遺言とは違って、封筒に入れて封印することは要件にはなっていません。もっとも、遺言書の内容を知られたくないため、封筒に入れて、開封防止のために封印をしても構いません。

まとめ

今までに説明したことを踏まえると、自筆証書遺言を作成するときは、以下の4点を守って書くことがベストです。

  1. 財産目録以外は全部自分で書く
  2. 日付は年月日を書く
  3. 戸籍上の氏名で書く
  4. 氏名の近くに実印で押す