障害者が一人暮らしをする

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相談者
私たちには、知的障害のある子どもがいます。いろいろな理由から、親元を離れて一人暮らしを計画しています。
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弁護士
親亡き後のことを考えると、一人暮らしができると親御さんとしても安心ですね。
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相談者
はい、そうなんです。ただ、賃貸アパートやマンションが借りられるかという心配はあります。
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弁護士
そうですね。障害があると入居を断るという大家さんがいることはいるので、心配ですよね。ただ、今では障害のある方向けの入居支援サービスがありますので、ご紹介します。

公営住宅・UR・一般賃貸

障害のある方が、賃貸住宅で一人暮らしをする場合、次の3つの選択肢が考えられます。

  1. 公営住宅
  2. UR
  3. 一般賃貸

これから、この3つについて、入居資格、保証人の要否、家賃・敷金礼金などの費用という3つの観点から、比較したいと思います。

入居資格

公営住宅

公営住宅とは、地方自治体が提供する所得が少ない人向けの賃貸住宅のことです。県営住宅、市営住宅と呼ばれるものです。

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弁護士
公営住宅は、公営住宅法という法律で大枠を定められているものの、詳細は各地の条例などで決められているので、地域によっては異なることがあるので、ご注意ください。

公営住宅の入居資格は、次のとおりです。

  1. 収入が少ないこと(月収15万8000円または25万9000円以下、低額所得要件)
  2. 現在、住宅に困っていること(住宅困窮要件)
  3. 原則として、同居する親族がいること(同居親族要件)

3の同居親族要件を見て、障害者が一人暮らしはできないのでは?と疑問を抱いたかもしれません。しかし、高齢者、障害者などは単身でも入れるのが一般的です。ただ、公営住宅は、基本的に家族向けなので、単身者向けの公営住宅の戸数は、少ないのが現状です。

倍率は全国平均で5倍

公営住宅への入居は、希望者が多いため、抽選になるところがほとんどです。倍率は全国平均で5倍で、東京都に至っては30倍になります。したがって、希望すれば誰でも入居できるわけではないです。

もっとも、障害者の場合、抽選倍率が低く抑えられる優遇を行なっている公営住宅が多いです。

UR(都市再生機構)

URが提供する賃貸住宅に申し込みをする場合、ハードルとなるのが、平均月収が家賃の4倍以上という条件です。例えば、5万円の家賃のところに申し込みをする場合に、月収が20万円以上でなければなりません。

もっとも、生活保護を受給している方や、高齢者・障害者であれば上記基準が緩和されるので、URの賃貸住宅に住めないというわけではありません。

一般賃貸

一般の賃貸住宅の場合は、大家(オーナー)と賃貸人との間で契約が成立すれば入居できます。ですので、入居の条件は大家次第ということになります。

大家(オーナー)の中には、高齢者・障害者の入居を好まない人が少なくないのが現状です。

保証人の要否

次に、家を借りるとき、「保証人」をつけることを求められるのが一般的です。公営住宅やURの場合はどうでしょうか? 結果は以下の表のとおりです。

公営住宅UR一般賃貸
地域によって違う不要必要
保証人の要否

家賃などの費用

家を借りるときに、一番重要になるのは家賃などの費用がいくらかかるかだと思います。家賃、敷金礼金、更新料について詳しく見ていきます。

公営住宅UR一般賃貸
家賃は低額で、一般賃貸の1/3程度民間と同程度がやや高い
敷金あり敷金なし敷金あり
礼金なし礼金なし礼金あり
更新料なし更新料なし更新料あり
仲介手数料なし仲介手数料なし仲介手数料あり
家賃などの費用の比較

まとめ

以上が、入居資格、保証人が必要かどうか、家賃などの費用という3つの観点から、公営住宅、UR、一般賃貸を比較しました。

相談者のお子さんのように知的障害があると、健常者や身体障害者と比べると収入が少ないのが現状です。そうなると、収入の少ない障害者の場合は、公営住宅が第1の選択肢になるといえるでしょう。

入居支援

障害のある方は、なかなか一般の賃貸を借りることができないという声をよく聞きます。実際に、私が保佐人をしている方は、不動産屋の時点で門前払いされていました。そこで、次に、障害者が賃貸住宅を探すためのサポートである入居支援について紹介します。

住宅入居等支援(居住サポート)事業

障害福祉サービスの一つとして、住居入居等支援(居住サポート)サービスというものがあります。このサービスの主な内容は次のとおりです。

  1. 不動産業者に対する賃貸住宅の紹介依頼
  2. 入居契約手続きのサポート
  3. 保証人の調整
  4. 家主等への相談・アドバイス
  5. 入居後の緊急対応

このサービスを利用する場合には、市町村の窓口に相談するか、または居住サポート事業を行っている事業者に問い合わせください。

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弁護士
居住サポート事業を実施している市町村は、そんなに多くはありません。そのため、お住まいの地域によっては居住サポートを受けられないことがあるのでご注意ください。

住宅セーフティーネット制度

2017年10月からスタートした新しい住宅セーフティーネット制度があります。障害のある方が部屋探しをする際に、この住宅セーフティーネット制度を利用することができます。

障害者の入居を受け入れる賃貸物件を探す

障害者などの住宅を確保するために配慮が必要な人たち(住宅確保要配慮者)の入居を受け入れる賃貸住宅は、「セーフティネット住宅情報提供システム」で検索して見つけることができます。

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弁護士
2020年3月現在登録されている賃貸物件約32万戸のうち、障害者の入居を受け入れる物件として登録されているのは、わずか6000戸にすぎません。

入居支援をする団体を探す

障害者に対する入居支援を行う団体として、次のような団体があります。

  1. 居住支援協議会
  2. 居住支援法人
  3. あんしん賃貸住宅協力店
居住支援協議会

居住支援協議会とは、地方自治体、居住支援法人、不動産業者、管理会社などの連携によって設置されたネットワークです。障害者などの住宅確保要配慮者と大家(家主、オーナー)双方に向けて、情報提供や相談を行なっています。

居住支援協議会は、2020年2月現在で、全都道府県及び49の市区町村(主に首都圏および大都市)に設置されています。

居住支援法人

居住支援法人とは、NPO法人などの非営利団体や、居住支援を目的とする会社で、一定の基準を満たしている法人のことです。

居住支援法人の主な支援内容は、次のとおりです。

  • 賃貸住宅への入居に関する情報提供
  • 賃貸住宅への入居相談
  • 見守りなどの生活支援 etc.

居住支援法人の名称や所在地、業務内容、連絡先などについては、国土交通省や都道府県のサイトで公表されているので、そちらをご覧ください。

あんしん賃貸住宅協力店

あんしん賃貸住宅協力店とは、障害者などの住宅確保要配慮者への相談、サポートを行なっている不動産仲介業者です。

あんしん賃貸住宅協力店は、都道府県単位で登録し、登録が認められるとインターネットなどで公表されます。なお、「あんしん賃貸住宅協力店」という名称は、地域によって異なりますので、ご注意ください。

まとめ

障害のある方の住まい探しに困ったら、居住サポート事業を行なっている市区町村にお住まいの場合は、まず役所の窓口にご相談ください。お住まいの地域では居住サポート事業が行われていない場合は、居住支援協議会か居住支援法人にお問い合わせください。