知的障害と障害年金

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相談者
私たちには、知的障害のある子どもがいます。まだ未成年なのですが、大きくなったら障害年金をもらうことはできるでしょうか?
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弁護士
知的障害であれば、障害基礎年金をもらえる可能性はあります。
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相談者
そうですか! いくらもらえるのでしょうか?
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弁護士
では、障害年金がもらえる要件とその金額について、できるだけ噛み砕いて解説します。

障害年金がもらえる要件

障害基礎年金と障害厚生年金

障害年金は、次の2種類があります。

  1. 障害基礎年金
  2. 障害厚生年金

知的障害のある方が、大人になって障害年金を受け取る場合の多くは、障害基礎年金です。そのため、ここでは、障害基礎年金に絞って解説します。

3つの要件

障害年金をもらうためには、次の3つの要件を満たさなければなりません。

  1. 初診日において国民年金に加入していること(加入要件、または初診日要件)
  2. 一定期間年金保険料の納付していること(納付要件
  3. 障害認定日において、一定の障害の状態にあること(障害の程度要件

次に、この3つの要件について、詳しく解説します。

加入要件・初診日要件

加入要件を満たしているかを判断する際に、「初診日」がいつなのかがはっきりしないと、国民年金に加入していたかどうかがわかりません。そういう意味で、初診日が重要になります。

ここにいう「初診日」とは、障害の原因となった病気やケガについて、初めて医者の診療を受けた日のことです。

現在は、20歳になったら国民年金には強制的に加入することはご存知だと思います。ですので、障害の原因となった病気やケガが20歳以降(65歳未満)であれば、加入要件は満たすことになります。

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相談者
病気やケガをしたのが20歳未満だと障害年金はもらえないのですか?
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弁護士
ご安心ください。大丈夫です。

国民年金は社会保険の制度ですので、年金保険料を支払っていないと年金をもらえないのが原則です。ただし、障害の原因となる病気やケガをしたのが20歳未満だと障害年金を貰えないというのは酷です。そこで、20歳未満に障害の原因となる病気やケガをした場合には、例外として、加入要件と納付要件を満たす必要はなくなります。

知的障害の初診日は?

知的障害は初診日はいつになるでしょうか? 知的障害と診断された日でしょうか? 知的障害は生まれついての障害と考えられていることから、初診日は出生日(生年月日)と決められています。したがって、知的障害の場合は、加入要件と納付要件は不要となります。

納付要件

国民年金は社会保険制度の一つなので、年金をもらうためには、一定期間、年金保険料を支払う必要があります。国民年金の一つである障害年金でも同じです。

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弁護士
私が後見人・保佐人をしている方で、障害の程度としては障害基礎年金をもらえるにもかかわらず、この納付要件を満たしていないがために、障害基礎年金をもらえない方がいます。

納付要件には2種類あり、どちらか一方を満たしている必要があります。

3分の2要件

国民年金に加入した月から、初診日の前々月までの期間のうち、3分の2以上の期間、保険料を納付しているか、年金保険料の免除を受けていることを、3分の2要件と言います。

この説明だけだとよくわからないと思うので、私の年金記録を具体例に説明します。「ねんきんネット」の「国民年金加入記録を確認する」ページによると、2020年1月現在の私の記録をまとめると以下のようになります。

期間の種類月数
加入していた期間302月
納付期間202月
免除期間71月
学生特例納付を受けていた期間28月
未納期間1月
年金記録のまとめ

仮に、私が2021年2月に、障害の原因となる病気やケガをして、医者の診療を受けたとします。初診日の前々月ですので、2020年12月までの加入期間は301月となります。これの3分の2は約200月となります。未納期間が1月ですので、納付または免除等を受けていた期間は300月となります。納付または免除等の期間が200月よりも多いので、3分の2要件は満たすことになります。

直近1年要件

3分の2要件を満たせない場合であっても、例外として、初診日の前々月までの直近1年間に未納期間がない場合も、納付要件を満たすことになります。これを直近1年要件と言います。

例えば、2021年2月に初診日があると、その前々月は2020年12月になります。2020年1月から12月の間に未納期間がなければ、直近1年要件は満たすことになります。

納付要件の確認は年金事務所で

ここでは、納付要件についてわかりやすく説明するために、細かい点については説明を省略しています。そのため、納付要件を実際に満たすかどうかは、年金事務所で確認してください。

知的障害の場合、納付要件は不要

上で説明していますが、知的障害の初診日は出生日(生年月日)です。そのため、初診日の前々月は生まれていませんので、国民年金に加入することも、保険料を納付することもできません。したがって、知的障害の場合は、納付要件は不要となります。

障害の程度要件

最後に、3つ目の要件である「障害の程度要件」について解説します。この要件は、障害認定日において、障害等級に当たる程度の障害があることです。

障害認定日

どの程度の障害があるかを判断する基準の日を「障害認定日」といいます。

障害認定日は、次の2つのうち、どちらか早い日となります。

  1. 病気や怪我が治った日、または症状が固定した日
  2. 初診日から1年半後

1.のうち「症状が固定した日」とは、簡単にいうと、病気やケガの症状が固まって、治療によってこれ以上良くならないと医師に判断された日のことです。

知的障害の障害認定日は?

知的障害の障害認定日はいつでしょうか? 初診日が出生日(生年月日)なので、1歳6か月になった日でしょうか? 初診日が20歳未満の場合は、20歳になった日において障害等級の程度の認定を行います。したがって、知的障害の場合は、20歳になった日における知的障害の程度によって、障害年金の等級が認定されることになります。

障害認定基準

障害年金における障害等級は、どのような基準によって判断されるのでしょうか? 「国民年金・厚生年金障害認定基準」に従って判断されます。

なお、この基準は、特別児童扶養手当の障害程度(1級か2級か)の認定基準(特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第3における障害の認定について)とほぼ同じ内容です。

知的障害の場合

知的障害について、障害年金の障害認定基準をまとめると、次のようになります。

障害の程度障害の状態
1級(1)知的障害があり、(2)食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、(3)会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、(4)日常生活が困難で常時援助を必要とするもの
2級(1)知的障害があり、(2)食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、(3)会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、(4)日常生活にあたって援助が必要なもの
知的障害の認定基準(改変)

なお、「知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。」と注意書きがあります。

軽度知的障害でも障害年金を受けられることがあります

一般的に、重度知的障害の場合は障害等級1級、中等度の場合は2級と認定されることが多いです。そのため、軽度知的だと障害基礎年金がもらえないと考える人もいるかもしれません。しかし、実際には、軽度知的であったり、就労ができていても、障害基礎年金2級をもらえる場合がありますのでご注意ください。

発達障害の場合

発達障害について、障害年金の障害認定基準は、次のとおりです(あくまでも例示です)。

障害の程度障害の状態
1級(1)発達障害があり、(2)社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、(3)著しく不適応な行動が見られるため、(4)日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
2級(1)発達障害があり、(2)社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、(3)不適応な行動が見られるため、(4)日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
発達障害の認定基準(改変)

以上が、障害年金をもらうための3要件の解説でした。

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弁護士
できるだけわかりやすく解説したつもりですが、複雑でよくわからなかったという人も少ないかもしれません。

障害年金の金額

障害基礎年金の年額

最後に、障害基礎年金でもらえる金額について、ご紹介します。

等級月額年額
1級8万1427円97万7125円
2級6万5141円78万1700円
障害基礎年金額(2020年度)

年金生活支援給付金

なお、障害基礎年金をもらっていて、前年の所得が一定基準を下回る人は、年金生活支援給付金がもらえます。

等級月額
1級6288円
2級5030円
年金生活支援給付金(2020年度)
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弁護士
一般就労ができない障害のある方の多くは、この年金生活者支援給付金をもらえるでしょう。