相続と障害年金の停止




法律の条文は読み飛ばしOK

障害年金の所得制限とその理由
障害年金の所得制限
障害年金は、原則として、障害年金を受け取っている人の収入や資力にかかわらず、受け取ることができます。
ただし、20歳から障害基礎年金をもらっている場合には例外があります。20歳未満のときに病気やケガをして、障害のある状態になると、20歳から障害基礎年金をもらえます(国民年金法30条の4)。
この場合に限って、障害年金を受け取っている人に、一定以上の所得があると、障害年金の全部または半分が停止されます。これを所得制限といいます。法律は次のように定めています。
第三十条の四の規定による障害基礎年金は、受給権者の前年の所得が、その者の所得税法に規定する同一生計配偶者及び扶養親族(以下「扶養親族等」という。)の有無及び数に応じて、政令で定める額を超えるときは、その年の八月から翌年の七月まで、政令で定めるところにより、その全部又は二分の一(第三十三条の二第一項の規定によりその額が加算された障害基礎年金にあつては、その額から同項の規定により加算する額を控除した額の二分の一)に相当する部分の支給を停止する。
2 前項に規定する所得の範囲及びその額の計算方法は、政令で定める
国民年金法36条の3
所得制限の理由
なぜ、20歳未満のときに病気やケガをして、障害のある状態になった場合には、このような所得制限があるのでしょうか?
それは、障害基礎年金を受け取っている人が、国民年金の保険料を支払わずに年金を受給しているので、一定以上の所得があるのなら、わざわざ障害基礎年金を与える必要がないからです。
所得の範囲
所得制限における「所得」とは、一体なんでしょうか? 相続で家を取得することが「所得」に該当すれば、所得制限を受けることになります。他方、「所得」に該当しなければ、所得制限は受けないことになります。
上で紹介した国民年金法は、所得の範囲については、政令で定めるとしています(国民年金法36条の3第2項)。政令とは、具体的には「国民年金法施行令」のことです。
国民年金法施行令6条1項によると、「所得」とは、地方税法等が規定する都道府県民税の非課税所得以外の所得であると定めています。
では、地方税法はどのように定めているでしょうか。地方税法32条2項における「所得」とは、所得税法22条2項・3項にいう所得と同じであると定めています。
最後に、所得税法は「所得」とはどのようなものとしているでしょうか。所得税法22条2項・3項に定められている「所得」とは、次のとおりです。
- 利子取得
- 配当取得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
- 退職所得
- 山林所得
この中には、相続によって家を取得することは含まれません。したがって、障害のある子どもが相続で家を所有し、財産が増えたとしても、障害基礎年金の所得制限とは無関係ですので、障害年金が停止されることはありません。
障害のある子どもに財産を残す方法の一つである「遺言」について詳しく知りたい方は、遺言に関する記事をご覧ください。