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勾留とは?
勾留とは、裁判所または裁判官が、犯罪をしたと疑われている人の身体を拘束することです。最大3日間の身体拘束である逮捕とは異なって、勾留は少なくとも10日間の長期間に渡ります。ここでは、どのような場合に保留されるかという勾留の要件、勾留されないための方法について弁護士が解説します。
どのような場合に勾留されるか?
法律の規定
勾留の要件を解説します。勾留はどのような場合に行われるでしょうか? 刑事訴訟法という法律では、その要件を次のように定めています。
第60条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
1 被告人が定まつた住居を有しないとき。
2 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
207条 前3条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
犯罪の嫌疑
「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合」とは、本人に犯罪の嫌疑があり、その嫌疑に相当な理由があることを意味します。有罪を立証できるほど必要十分な証拠までは要求されていません。この要件は当然のことですが必須です。つまり、理由もないのに勾留されることはありません。
この要件を満たしていることを前提に、次のいずれか1つの要件を満たした場合に勾留が認められます。
1. 住所不定
2. 証拠隠滅のおそれ
3. 逃亡のおそれ
住所不定
ホームレスなど定まった住居がない場合、裁判所や警察署に本人を呼び出すにしても、どこにいるか分からなければ呼び出すことができません。そのような人はどこかに行ってしまうので身体の拘束をする必要があります。
証拠隠滅のおそれ
証拠隠滅する疑いがあり、その疑いがに相当な理由がある場合も、身体を拘束する必要があります。なぜなら、証拠隠滅されてしまうと犯罪捜査に支障が出たり、犯罪の立証ができなくなってしまうからです。
例えば次のような場合に、証拠隠滅をする十分な可能性があるとされます。
- 加害者が被害者と面識があったり、被害者の住所や連絡先を知っている場合
- 犯罪に利用した凶器、犯罪で手に入れた物などが見つかっていない場合
- 薬物事件、飲酒運転
逃亡のおそれ
犯罪をしたと疑われている人に逃亡する疑いがあり、その疑いに相当な理由がある場合も同様です。なぜなら、逃亡してしまうと、犯罪捜査に支障が出たり、その人を裁判にかけることができなくなって、逃げ得になってしまうからです。
例えば次のような場合に、逃亡をする十分な可能性があるとされます。
- 無職やフリーター
- 独身で一人暮らし
- 前科前歴がある
勾留の必要性
以上の要件は、「勾留の理由」といいます。その他に「勾留の必要」も勾留の要件です。「勾留の必要」とは、勾留させることが相当であることを意味しています。事件の軽重、被疑者の年齢や健康状態などを総合的に判断されます。
勾留させない方法
証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれという要件について、裁判官は厳密に該当するかを判断するようなことはしません。比較的緩やかに認められるのが実情です。しかし、勾留をさせない方法はあります。その方法について解説します。
ホームレスでない限り、通常、定まった住居はありますので、勾留を阻止するためには、証拠隠滅のおそれと逃亡のおそれがないことを検察官や裁判官を説得します。
具体的には、以下のことを検察官や裁判官に伝えます。
- 本人に証拠隠滅する意思がないこと
- 証拠隠滅することが客観的にできないこと
- 本人に逃亡する意思がないこと
- 配偶者や子供がいたり、定職についていたりするので、それらを失ってでも逃亡するようなことがありえないこと
説得する材料として、以下の書類などを検察官や裁判官に提出します。
- 証拠隠滅や逃亡をしないと約束した本人の誓約書
- 配偶者や家族の身柄引受書
- 定職についていることを示すために会社の名刺や上司の陳述書
- 持ち家がある場合にはその不動産登記簿
