選択的シングルマザーの法的問題

選択的シングルマザーとは?

選択的シングルマザー(Single Mother by Choice)とは,自らの意思で非婚で子どもを出産し,一人で子育てをしている女性を意味します。ここでは,匿名の男性から精子提供を受けて妊娠した女性に限定して,その法的問題と対処方法を考えていきたいと思います。

法律上の父の不存在

非婚で出産した子どもは,非嫡出子(婚外子)となります。母との法的な親子関係は出産の事実によって当然に発生します。したがって,選択的シングルマザーは,出産と同時に,子どもの親権者になります。

他方,血縁上の父は匿名の精子提供者ですが,同時に法律上の父親ということにはなりません。なぜなら,非嫡出子(婚外子)と父との親子関係は,父による認知が必要なのですが,匿名の精子提供者が認知するとは通常考えられないからです。したがって,選択的シングルマザーの子は,血縁上の父は存在しますが,法律上の父はいないことになります。したがって,選択的シングルマザーの子どもの親権者は,母しかいません。

法律上の父がいないという事実が,子どもに与える不利益は,子どもが母の経済状況のみに依存することにあります。つまり,一般的に,母の収入が,離れて暮らす法律上の父と同程度以上であれば,子どもは父に対して養育費を請求することができますが,法律上の父がいない子どもは,そのような請求はできません。

この不利益への対処方法は,子が匿名の精子提供者の身元を知る手段がない限り,ありません。身元がわかれば,血縁上の父に対して認知を求めることができます。なお,養育費を請求することはできませんが,児童扶養手当の支給は受けられます。

母の死亡と未成年後見人

唯一の親権者である選択的シングルマザーが,子が未成年のうちに死亡した場合に,子はどうなるのでしょうか?

子が18歳未満の児童で,子の面倒を見てくれる母の親族がいない場合,子は児童養護施設に入所することになり,そこで生活をすることになるでしょう。施設入所を避けるためには,母の死後に子の世話をしてくれる大人を確保しておく必要があります。

また,選択的シングルマザーであれば,子が成人するまでに,病気や事故で死ぬかもしれないというリスクを考慮して,子の生活保障のために生命保険(特に掛け捨ての定期保険)に加入している人も少なくないでしょう。そのような場合,母の死後に子の世話をする大人は,子が受取人となった多額の生命保険金の管理もしなければなりません。

子の世話や財産の管理を任せられる大人がいる場合(選択的シングルマザーの親族であることが多いでしょう。),遺言書を作成し,その任せられる大人を未成年後見に指定する旨の条項を入れましょう。そうすることで,母の死後その人が未成年後見人になります。未成年後見人は,母の代わりに子の世話や財産の管理をする権限が与えられます。

弁護士前園進也の近影

弁護士(アーネスト法律事務所所属)
離婚家庭・再婚家庭の子どもとして、夫婦や家族の問題について情報発信をしています。