母子手帳は誰のもの?

母子手帳小学生未満の子どもを連れて別居する際に、母子手帳(正式には、母子健康手帳といいます)を持っていかなかった場合、母子手帳の渡す渡さないで夫婦間でもめることが珍しくありません。そこで、母子手帳は誰のものなのかについて説明します。

母子手帳の所有者は誰?

母子手帳の所有者は誰かについて説明します。結論をいうと、原則として子どもの母親です。理由は次のとおりです。

母子手帳は、母子保健法という法律に定められています。母子保健法16条1項は「市町村は、妊娠の届出をした者に対して、母子健康手帳を交付しなければならない。」と定めています。ここにある「妊娠の届出をした者」とは、「妊娠をした者」(母子保健法15条)、つまり、子どもの母親のことです。したがって、母子手帳の最初に受け取るのは、子どもの母親ですので、母子手帳の所有者は子どもの母親になります。

なお、母子手帳を子どもの父親や第三者にあげた場合は、母子手帳の所有権は移ります。

母子手帳の所有者は、子どもの母親なので、母親の手元に母子手帳がない場合、母子手帳を持っている人(子どもの父親や祖父母など)に、渡すように求めることができます。母子手帳を持っている人は、原則として、その求めを拒むことはできません。

母子手帳の引渡しを拒否できる?

では、例外として、どのような場合に母子手帳の引渡しを拒否できるでしょうか?
結論としては、母子手帳を現に持っている人が、母子保健法6条4号にいう「保護者」にあたる場合は、拒否できると思います。

「保護者」とは、親権者などで、乳児(1歳未満の子ども)か幼児(1歳以上小学生未満の子ども)を現に監護(世話)している人のことです。

母子保健法16条2項は「妊産婦は、医師、歯科医師、助産師又は保健師について、健康診査又は保健指導を受けたときは、その都度、母子健康手帳に必要な事項の記載を受けなければならない。乳児又は幼児の健康診査又は保健指導を受けた当該乳児又は幼児の保護者についても、同様とする。」と定めています。つまり、保護者は健康診査や保健指導を受けた時には、母子手帳に必要な事項を書いてもらわなければなりません。この法律の規定から、保護者は母子手帳を手元にもっていることを当然の前提にしています。そうでなければ、健診などの際に必要事項を書いてもらうことはできません。したがって、この保護者にあたるのであれば、母子手帳をもっているちゃんとした理由があるので、子どもの母親から母子手帳を渡せと求められても拒むことができると私は考えます。

もっとも、 母子手帳はコピーであっても問題がないので、コピーをとって、母子手帳自体は母親に返してもよいと思います。

子どもの父親が母親に母子手帳の引渡しを求めることができる?

それでは、父親が子どもと一緒に住んで、現に子どもの面倒を見ている場合(つまり、先ほどの「保護者」といえる場合です)、母子手帳を持っている別居中の母親に対して、母子手帳を渡すように言えるでしょうか?

結論としては、難しいと思います。母子手帳の所有者は母親ですので、母親が拒否すればどうしようもありません。

ですので、母子手帳を渡すことを母親に拒否された場合は、健診のために必要なのでコピーを渡してほしいとお願いすることぐらいしかできないと思います。

感情的に対立している母と父との間では、母子手帳ひとつとってもモメるタネになってしまいます。母子手帳は法律に定められたものですので、法律に従って冷静に対応して、余計な揉め事を増やさないことが望ましいと思います。

弁護士前園進也の近影

弁護士(アーネスト法律事務所所属)
離婚家庭・再婚家庭の子どもとして、夫婦や家族の問題について情報発信をしています。