要保護児童の多重的逆境について

2015年5月31日(日)13時30分から,新宿にある東京ビジネスホテルで,RFCx里親の学校合同勉強会に参加してきました。その模様と感想を書きたいと思います。

勉強会の前半は,臨床心理士の池上和子さんによる講義で,後半は質疑応答と参加者同士の情報交換という2部構成でした。講義の概要は,次のとおりです。

講義の概要

児童虐待の背景には,貧困だけではなく,母親に精神疾患や,薬物・アルコール依存等の問題があることが,児童相談所の虐待相談受理や児童養護施設への入所児童について調査から,明らかになりました。このように「貧困」という一つの枠組みでは捉えることができない重層化した養護困難があるため,子どもの貧困から多重逆境への視点の変換が必要となります。

このような多重的逆境が子どもに及ぼす影響としては,子どもの学校中退率や警察に関わる件数を増加させるという調査結果があります。また,悲哀,自尊心の低下,希望の喪失などの子どもを心理的に傷つけることになります。

今後の課題としては,(1)児童相談所における聞き取り,情報収集困難の改善,(2)研究者の人数と時間の確保,(3)入所児童の長期追跡調査の必要性が挙げられます。

感想

厚生労働省によると,施設入所の大きな目的は,子どもの安全を確保し,病理現象としての虐待を治療し,保護者が子どもと再び生活できるようにすること(家族の再統合)にあるそうです。もっとも,深刻な虐待事案の場合,再統合はなされないことが多いようです。
しかし,ひどい親であっても,子どもにとっては特別な存在であるため,親との適切な距離のとり方が大切であると,児童養護施設の職員の方が言っていました。このことは,私が関与した事件でお世話になった親子関係の研究者の方も言っていました。

子どもが親との適切な距離をつかむためには,虐待の事実を受け入れた上で,なぜ親が虐待をしたのか,なぜ自分は施設に入ることになったのかを知ることは重要だと思います。なぜなら,親が自分を嫌いだから虐待し,見捨てたわけではなく,多重的逆境から親が精神的に追い詰められたことが大きく関わっていることを知ることは,子どもにとって自分の境遇を理解し整理することになると思うからです。

しかし,児童相談所や児童養護施設が作成した子どもに関する記録は,ほとんどの自治体で子どもが25歳になったら破棄されるそうです。この記録が秘匿性の高い情報であることは想像に難くないが,破棄されてしまったら,親子関係に関する重要な情報に一切アクセスできないことになり,子どもにとってあんまりな運用だと思います。

弁護士前園進也の近影

弁護士(アーネスト法律事務所所属)
離婚家庭・再婚家庭の子どもとして、夫婦や家族の問題について情報発信をしています。