死後事務委任契約について

知的・精神障害者の親亡き後の備えとして、葬儀、火葬、埋葬などの死後の事務についても検討していますか? 障害者の親亡き後のテーマとして、葬儀、火葬、埋葬などの死後の事務について、あまり注目されることはありません。が、家族の状況によっては、障害者だけではなく、障害者の親や家族の死後事務も、しっかり準備しておいた方がいい場合があります。障害者の親亡き後の備えについて、関心がある方は、この記事を最後までご覧ください。

人が亡くなってから埋葬されるまで

人の死後の事務として、どういうことをしなければならないのかについて、最初に紹介します。

病院で亡くなったケース

人が亡くなってから、埋葬されるまでの基本的な流れは、次のとおりです。ここでは、病院で亡くなったケースを前提としています。

  1. 病院からの遺体の搬送
  2. 死亡届・火葬埋葬の許可申請
  3. 通夜・告別式
  4. 火葬
  5. 埋葬

3.の通夜・告別式をしない場合を「直葬」といいます。通夜・告別式は一番お金がかかるので、省略して直葬にすることも少なくありません。

これらの5つについて、誰ができるのか、費用はどれくらいという点を解説します。

遺体の搬送

病院からの搬送自体は、葬儀会社が行います。その葬儀会社選びは、病院からもらう葬儀社リストに載っている葬儀社や、事前に契約している葬儀会社に、遺族や関係者が連絡するというのが一般的です。

遺体搬送費用は、数万円です。遺体の搬送をした葬儀会社が、葬儀や火葬埋葬の手配をする場合には、葬儀費用全体に含まれることも多いです。遺体を生前に住んでいた家などに搬送できない場合は、葬儀会社の霊安室で預かってもうため、霊安室の使用料として数万円はかかります。

死亡届の届出

届出義務者

人が亡くなったら、亡くなったのを知ってから7日以内に、届出義務者は死亡届を役所に提出しなければなりません(戸籍法86条1項)。

届出義務者に当たる人は、次のとおりです(戸籍法87条1項)。

  1. 同居の親族
  2. その他の同居者
  3. 家主、地主、家屋の管理人、土地の管理人

2.にあるように、親族でなくても、同居している人でも死亡届を出せます。同居している人なので、届出をしていない内縁の配偶者はもちろん、ルームシェアをしている同居人であっても、届出義務者となります。

病院で亡くなった場合は、病院も死亡届を出せます。また、賃貸アパートで亡くなった場合、大家や管理会社も死亡届の届出義務者となります。

その他に届出ができる人

死亡届の届出義務者ではないないものの、死亡届を提出できる人がいます。それは、次のとおりです(戸籍法87条2項)。

  1. 同居の親族以外の親族
  2. 後見人、保佐人、補助人、任意後見人
  3. 任意後見受任者

親族であれば、同居していなくても死亡届を提出することはできます。また、本人が成年後見制度を利用していたら、成年後見人なども死亡届を提出することができます。

3.の任意後見受任者とは、死亡した人と任意後見契約を結び、判断能力が低下したら任意後見人になると約束した人のことです。任意後見受任者は、判断能力が低下する前に本人が亡くなっても死亡届を出せることになります。

死亡届出と埋火葬許可の申請

死亡届は、実際には葬儀会社の方で書いて出してくれます。死亡届と一緒に火葬と埋葬の許可申請を行います。

死亡届の提出、火葬埋葬の許可申請は、葬儀費用に含まれるのが一般的です。

通夜・告別式

通夜・告別式は、喪主が葬儀会社と協力して手配することになります。宗教に則った葬儀もあれば、無宗教の葬儀もあります。先ほど紹介したように葬儀自体を行わない直葬もあります。

喪主は親族がなることが一般的です。が、法律で決まっているわけではないので、喪主になってくれる親族がいなければ、友人知人が喪主になることもできます。

通夜・告別式の費用は葬儀の内容によってさまざまです。直葬であれば20、30万円程度で収まります。他方、通夜・告別式をするとなると、50万円以上になることは、よくあります。

火葬

火葬と埋葬は、市町村長から許可証を交付してもらわないと、できないと法律で決まっています。火葬の許可申請は、死亡届と一緒に、死亡届を提出した人の名前で、葬儀会社が申請してくれます。ですので、死亡届を提出した人が火葬場にお願いして、遺体を火葬することになります。

火葬後に遺骨は、骨壷に入れて埋火葬許可証と一緒に箱にしまいます。家で遺骨を保管できない、したくない場合は別途費用を支払えば、葬儀会社で保管してくれるところもあります。

火葬自体の費用は、火葬場が公営か民営かによって多少の差はありますが、1万円から5万円程度です。

埋葬

埋葬は火葬と同じく死亡届を提出した人の名前で許可申請をします。ですので、埋葬も死亡届を提出した人が手配します。

お寺にお墓があれば四十九日に納骨して、そのようなお墓がなければ共同墓地などに埋葬することになります。

埋葬の費用もさまざまです。合祀で埋葬する場合は10万円未満のところもあります。お墓に埋葬するとなると、数十万円以上となります。墓石を購入するとなると、数百万にもなります。

葬儀を取り仕切るのは死亡届を提出できる人がおすすめ

これまでに説明した、人が亡くなってから埋葬までの流れを踏まえると、死亡届を提出できる人が葬儀関係の手配をするのが効率的ということになります。

葬儀は誰に任せる?

障害者の場合は支援者

では、知的障害者や精神障害者の葬儀関係は誰に任せるといいでしょうか。特に、うちの子のような一人っ子の障害者の場合は、きょうだいや親族がいないので、気になるところです。

もっとも、現在、きょうだいや親族がいたとしても、障害者より先に亡くなることもあるので、親族がいるとしても、親族以外に責任持って葬儀関係を取り仕切ってくれる人を準備した方が安心です。

障害者支援施設やグループホームで住んでいる障害者の場合は、家屋の管理人として、その事業者が死亡届を提出することができます。ですので、障害者支援施設やグループホームを運営している事業者に、障害者が亡くなった際に葬儀などをしてもらえるのか確認します。

一人暮らしをしている障害者の場合は、成年後見人、保佐人、補助人、任意後見人がついていることも多いと思うので、それらの人にお願いすることになります。

障害者が死亡した場合には、死亡届を提出できる人の手配はそんなに難しくないと思います。

葬儀費用の用意は忘れずに

しかし、葬儀関係の費用については、死亡届を提出する人が、亡くなった本人の財産から勝手に使うことはできません。成年後見人だけは、裁判所の許可があれば、火葬と埋葬に関する費用を本人の財産から支出できます。が、そのほかの人たちはできません。

許可を得た成年後見人も、通夜・告別式の費用、僧侶に支払うお布施を本人の財産から支払うことはできません。ですので、親や家族の方で、障害者の葬儀関係をお願いするときに、葬儀関係の費用を事前に渡しておかないと、死亡届の提出をした人が自腹を切ることにもなりかねないので注意が必要です。

親の場合は親族か任意後見受託者

うちの子のように一人っ子の重度の障害者の場合、親が亡くなった際に、法律上は死亡届の提出はできます。
が、成年後見人などがついていない限り、葬儀会社に依頼することはできません。

そのため、親の葬儀関係を取り仕切る人の手配も場合によっては必要となります。ただ、死別または離別によって配偶者がいない親の場合、死亡届の提出ができる人がかなり限られます。

親自身には親族がいるとしても、その親族に誰が連絡してくれるのかという問題があります。仮に、親族に連絡が取れても、葬儀関係の費用は、その親族が自腹ということもあり得ます。

死亡届の提出ができる人を親の方で手配できないと、病院や賃貸住宅の大家や管理会社に死亡届を提出してもらって、火葬と埋葬は地方自治体でしてもらうことになります。これはこれで構わないという人はいいのですが、人様には迷惑をかけたくないというのであれば、やはり親の方で葬儀関係を取り仕切ってくれる人を手配しなければなりません。

その方法の一つとして、信頼できる人と任意後見契約と死後事務委任契約を締結するという方法があります。先ほど死亡届のところで紹介しましたが、任意後見受任者も死亡届を提出することができます。そのため、親が信頼している人に死亡届の提出、火葬埋葬を頼むことができます。

そして、どのような葬儀してほしいか、どこに埋葬してほしいかなどは、死後事務委任契約で定めておけば、その契約に基づいて、任意後見受任者が死後の諸々の手続きを取り仕切ってくれます。

死後事務委任契約を結ぶときに、想定される費用と報酬を預けます。

なお、親族との間で死後事務委任契約を結ぶ場合は、任意後見契約を締結しなくても大丈夫です。が、認知症などにならないとはいえないので、任意後見契約の締結も要検討です。

私のプラン

私は、自分自身の葬儀はどうでもいいので、住んでいる自治体の方で火葬埋葬してもらってもいいです。

が、うちの子どもについては、生前に関わっていた人何人かには見送ってもらいたいなと思います。そのためには、うちの子どもの葬儀関係を取り仕切ってくれる人や葬儀関係の費用を私たちの方で用意しなければなりません。

私のプランとしては、私たちが生きているうちに、うちの子に成年後見人をつけるつもりなので、その成年後見人に葬儀関係の費用や報酬をお渡しして、うちの子の葬儀関係も責任持ってしていただけるようにお願いしたいと考えています。

死後事務委任契約を作ろうか悩んでいる方へ

次のようなことでお困りの方は、ご相談に乗ります。お悩み・困り事の解消をお手伝いさせていただきます

  • 死後事務委任契約が必要かどうかわからない
  • 一人っ子の障害者の葬儀などが心配