成年後見人の報酬について、現役の成年後見人である私が、できるだけわかりやすく解説します。

成年後見人はどんな人?

成年後見人とは?

成年後見人とは、(主に経済的な)判断能力がない人の代わりに、その人の財産を管理したり、身上を保護したりする人です。

成年後見人は、判断能力がない人の親族(子どもや兄弟姉妹など)がなったり、弁護士・司法書士・社会福祉士などの国家資格を有する人が、家庭裁判所から選任されます。

成年後見人の職務内容

成年後見人の職務は、次の2つに大きく分けられます。

  1. 財産管理
  2. 身上監護(身上保護)

財産管理の例は、次のとおりです。

  • 預貯金の管理
  • 確定申告や税金などの支払い
  • ご本人に生活費を渡す

なお、成年後見人は財産を管理することなので、運用して増やすことは求められていません。

身上監護の例は、次のとおりです。

  • 介護や障害福祉サービスの申請、事業者との契約
  • 施設や病院との契約やその料金の支払い

成年後見人の報酬

報酬の種類

成年後見人の報酬は、次の2種類あります。

  1. 基本報酬
  2. 付加報酬

基本報酬は、上で紹介した成年後見人の通常の職務に対する対価のことです。

他方、付加報酬とは、身上監護などに特別に難しい事情があったり、通常の職務ではない特別なことをしたりしたことへの対価です。

基本報酬額の目安

報酬の金額は、ご本人や成年後見人が決めることはできず、家庭裁判所が決めます。家庭裁判所は、報酬額についての目安を公表しています(成年後見人等の報酬のめやす)。

成年後見人の基本報酬は、現金、預貯金、有価証券(株式、投資信託、国債など)の流動資産(簡単に現金化できる資産)の合計金額によって、次の表のように3段階に分かれます。

流動資産月額年額
1000万以下2万円24万円
1000万超から5000万以下3〜4万円36〜48万円
5000万超5〜6万円60〜72万円
成年後見人の報酬の目安

なお、これはあくまでも目安です。実際に、私は流動資産が1000万円以下の方の成年後見人をしていますが、24万円をやや下回っています。

付加報酬額の目安

家庭裁判所は、付加報酬については、基本報酬のような明確な目安は公表していません。わかっている範囲ですが、次の表のとおりです。

金額の目安
身上監護などが特別に困難な場合基本報酬の50%の範囲内
特別なことをした場合ご本人が手に入れた経済的利益の数%から15%の範囲内
付加報酬額の目安

成年後見人の報酬を市町村が肩代わり

以上が、成年後見人の報酬についての目安です。付加報酬はすべての人に発生するわけではありません。しかし、基本報酬は基本的にはご本人が亡くなるまで発生します。その最低額は月額2万円(年額24万円)となります。

この金額を高いとみるか、相応とみるかは人それぞれだと思います。しかし、成年後見人のなり手が十分に確保できているとはいえないため、月額2万円より減るということはなかなか考えにくいと思います。

成年後見人の報酬が高くて、利用したくてもできない。成年後見人に報酬を払うのがもったいない。このように思っていませんか? そのような方には、成年後見人の報酬を市町村が肩代わりしてくれる制度、つまり、成年後見人の報酬の助成制度があるのをご存知ですか? この報酬助成制度については、「成年後見制度を無料で利用できる制度」で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

成年後見制度の報酬をより詳しく知りたい方は、「成年後見人などの報酬 【現役の成年後見人・監督人がすべて教えます】」をご覧ください。