保佐人の報酬について、現役の保佐人である私が、できるだけわかりやすく解説します。

保佐人はどんな人?

保佐人とは?

保佐人とは、(主に経済的な)判断能力が著しく低下している人が重要な財産を失ったり騙し取られたりしないようにサポートするする人です。

保佐人は、判断能力が著しく低下している人の親族(子どもや兄弟姉妹など)がなったり、弁護士・司法書士などの国家資格を有する人が、家庭裁判所から選任されます。

保佐人の職務内容

同意と取り消し

保佐人の職務は、次の2つに大きく分けられます。

  1. ご本人の財産に大きな影響を与える行為に対する同意
  2. 保佐人の同意がなくなされた1.の行為を取り消すこと

ご本人の財産に大きな影響を与える行為は、民法という法律で、次のように定めています(民法13条)。例えば、次のような行為です。

  • お金を借りること
  • 不動産の売買
  • 訴訟
  • 相続の放棄や遺産分割など

代理権の付与

保佐人は、成年後見人のように、ご本人の代わりに財産を管理し、またはご本人の身上を保護することはしません。しかし、ご本人の状況によっては、ご本人の財産に大きな影響を与える行為などを保佐人が代わりにした方がいい場合があります。

そのような場合には、家庭裁判所の許可があれば、ご本人の財産に大きな影響を与える行為の全部または一部について、保佐人に成年後見人のような代理権を与えることができます。

私は実際に代理権が付与されている保佐人をしています。ご本人の財産に大きな影響を与える行為のほぼ全部について代理権が与えられた保佐人は、実質的には成年後見人とすることは一緒になります。

保佐人の報酬

報酬の種類

保佐人の報酬は、次の2種類あります。

  1. 基本報酬
  2. 付加報酬

基本報酬は、上で紹介した保佐人の通常の職務に対する対価のことです。

他方、付加報酬とは、身上監護などに特別に難しい事情があったり、通常の職務ではない特別なことをしたりしたことへの対価です。

基本報酬額の目安

報酬の金額は、ご本人や保佐人が決めることはできず、家庭裁判所が決めます。家庭裁判所は、報酬額についての目安を公表しています(成年後見人等の報酬のめやす)。

保佐人の基本報酬は、現金、預貯金、有価証券(株式、投資信託、国債など)の流動資産(簡単に現金化できる資産)の合計金額によって、次の表のように3段階に分かれます。

流動資産月額年額
1000万以下2万円24万円
1000万超から5000万以下3〜4万円36〜48万円
5000万超5〜6万円60〜72万円
保佐人の基本報酬の目安

なお、これはあくまでも目安です。実際に、私は流動資産が1000万円以下の方の保佐人をしていますが、24万円をやや下回っています。

家庭裁判所が公表している目安には記載がありませんが、代理権が付与されていない保佐人の場合は、流動資産の金額によって基本報酬が増えることはおそらくないと思います。なぜなら、流動資産が増えると基本報酬が増える理由は、財産の管理が複雑になり大変になるからです。しかし、代理権が付与されていない保佐人は、ご本人の財産を管理することはありませんので、基本報酬が増える理由が当てはまらないからです。

付加報酬額の目安

家庭裁判所は、付加報酬については、基本報酬のような明確な目安は公表していません。わかっている範囲ですが、次の表のとおりです。

金額の目安
身上監護などが特別に困難な場合基本報酬の50%の範囲内
特別なことをした場合ご本人が手に入れた経済的利益の数%から15%の範囲内
付加報酬額の目安

なお、代理権が与えられていない保佐人は、基本的には付加報酬が発生することはないと考えられます。

保佐人の報酬を市町村が肩代わり

以上が、保佐人の報酬についての目安です。代理権が付与されていない保佐人であれば、多くの場合、月額2万円(年額24万円)となると思われます。他方、代理権が与えられた保佐人の場合は、成年後見人と同じく、ご本人の流動資産の額によって基本報酬が増えます。

保佐人の報酬が高くて、利用したくてもできない。保佐人に報酬を払うのがもったいない。このように思っていませんか? そのような方には、保佐人の報酬を市町村が肩代わりしてくれる制度、つまり、保佐人の報酬の助成制度があるのをご存知ですか? この報酬助成制度については、「成年後見制度を無料で利用できる制度」で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

成年後見制度の報酬をより詳しく知りたい方は、「成年後見人などの報酬 【現役の成年後見人・監督人がすべて教えます】」をご覧ください。